出版社内容情報
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人格の構造はシナプスのレベルからどの程度理解されているのか? 本書はこの疑問に答えようという壮大な試みである。著者が自身の大胆な仮説も導入してまとめあげる人格のシナプスメカニズムはまだ素描ではあるが、読者は読後に人格の構造を眼前に見るような手ごたえを感じるだろう。
著者の徹底して還元主義的なアプローチからは、意識的な自己以上に、自己の無意識的な部分が人間の精神活動・行動とその個性を生み出す構造が見えてくる。また、シナプスが脳内で局所的にも大域的にも, いかに可塑的であるかを本書は強調する。「遺伝」と「経験」は相互に影響するが、脳が生み出す人格の個性は、遺伝以上に外的あるいは内的経験がシナプスの可塑性に作用することで形作られるのだ。
さらに、自己という多次元構造の中で知・情・意のバランスがいかにダイナミックに変化しうるかについては、著者自身が多年にわたる情動メカニズムの研究から得た洞察を随所で明かしている。
近年の神経科学の膨大な研究成果と、それ以上にたくさんの新たな謎を提示する本書は、心理学・精神医学・認知科学など人格/自己を探求する他分野へも無尽の示唆を与えるだろう。また、脳という偉大なパズルのスマートな解法を競う神経科学者たちの世界を垣間見られることも、本書の魅力のひとつである。
内容説明
あまりにも精妙な脳の素子、シナプス。ミクロの素子から人格の構造とダイナミクスが生じる仕組みを、情動の神経科学の第一人者が還元主義的に解き明かす。
目次
第1章 大きな問題
第2章 自己を求めて
第3章 いちばんわけのわからない機械装置
第4章 脳の構築
第5章 時の中の冒険
第6章 小さな変化
第7章 心の三部作
第8章 情―『エモーショナル・ブレイン』再訪
第9章 意―ロスト・ワールド
第10章 シナプスの病気
第11章 あなたは何者なのか
著者等紹介
ルドゥー,ジョゼフ[ルドゥー,ジョゼフ][LeDoux,Joseph]
1949年生まれ。ニューヨーク大学神経科学センター教授。徹底した還元主義の立場をとり、実験的に検証可能なアプローチによる情動(感情)メカニズムの解明というテーマに長年取り組んでいる。特に、恐怖の神経メカニズムに関する主導的研究者である
森憲作[モリケンサク]
東京大学大学院医学系研究科教授。専門は神経科学。昭和53年大阪大学で工学博士取得後、群馬大学、イェール大学の研究職を経て、昭和62年に(財)大阪バイオサイエンス研究所第3研究部副部長に就任。平成7年から理化学研究所に移り、国際フロンティア研究システム・グループディレクター、平成9年から理化学研究所・脳科学総合研究センター・グループディレクター。平成11年から現職。嗅覚神経系の基本構造・機能や匂い情報処理回路などの細胞生理学的研究に携わっている
谷垣暁美[タニガキアケミ]
翻訳者
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感想・レビュー
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