内容説明
じつは電気椅子は、19世紀末の電力市場における直流と交流のシェア争いの副産物だったのだ。本書は、電力市場における直流と交流の争いに、マーケティングの重要性を知りぬいていた発明家エジソンが絡んで、ニューヨーク州で電気処刑が採用されるに至るまでの経緯を明らかにする。科学技術への闇雲な期待と電力業界の覇権争いが絡み合い、奇怪な処刑法が誕生するまでの物語。「残酷で異常な刑罰」の基準を引き出した法廷論争も詳細に辿る。
目次
第1章 いよいよだ、ウィリアム
第2章 電流戦争―エジソン対ウェスティングハウス、DC対AC
第3章 電気処刑新法
第4章 ハロルド・ブラウンと「処刑人の電流」
第5章 「縛り首にしてくれ」―ウィリアム・ケムラーの人生、犯罪、そして裁判
第6章 異常なほど残酷な刑罰
第7章 残酷でも異常でもない刑罰
第8章 ケムラーの遺産―人道的な処刑手段を求めて
著者等紹介
モラン,リチャード[モラン,リチャード][Moran,Richard]
現マウント・ホリオーク大学社会学教授。専門は犯罪学。大学の外でも、ワシントン・ポスト、ロサンジェルス・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ、ニューズウィークほか、多数の新聞・雑誌に解説記事やコラムを発表し、ラジオ番組のコメンテーターを務めるなど積極的に活動している
岩舘葉子[イワタテヨウコ]
1978年、中央大学文学部文学科卒業。フリーランスの翻訳家として活動中
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
dilettante_k
3
原著02年。1890年、アメリカで人類初の電気椅子による処刑が行われた。まだ生まれたての技術を用いた処刑方法の誕生には、エジソン対ウェスティングハウスのいわゆる直流・交流論争が関わっていた。筆者は、電流論争の経緯から、より人道的な処刑法をめぐる文化・法律論争や被告人を置き去りにした法廷闘争、被告人自身の経歴までを丹念に辿り、人道という倫理的問題が技術や法的問題にすり替わり、電気椅子が進歩の名のもとに他者の苦痛を抑圧する契機として誕生したと指摘する。ジャーナリスティックな筆致でモダニズムの核心に迫る1冊。2014/11/19
takao
2
電気処刑2024/01/16
シュミットさん
1
1890年、アメリカである殺人犯の男が、世界処刑史上初となる電気椅子によって命を落とした。驚くべきことに、この電気処刑の開発にはあの発明王エジソンの加担があったのだ。本書は、なぜエジソンがこの開発にかかわることになったのかという経緯と、電気処刑は「残酷で異常な刑罰」なのかをめぐっての論争を振り返る。2008/11/14
抹茶ケーキ
0
アメリカにおいて電気椅子による死刑がどのように導入されたか、なぜそれは合憲と認められるにいたったか。そこにはライバル会社の製品を死刑に使わせることでイメージを悪化させようとするエジソンの意図が関わっていた。みたいな話。犯罪学というより歴史学の本だなと感じた。2016/11/30
冷やしたぬき蕎麦はじめました。
0
映画公開前読書。副題にエジソン、電流戦争と電気椅子の発明とあるので、エジソンとウェスティングハウスを中心に語られるのかと思ったら、ほとんどが死刑制度そのものに関する話しが中心で、電流戦争はほとんど語られていません。テスラもエジソン像のコメントぐらい。期待したものと違う(;^ω^)2020/06/16
-
- 和書
- 初心者のピアノ基礎教本