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出版社内容情報
世紀末ウィーンから二つの大戦へ。知識人との交流を挿みつつ西欧の偉大と悲惨を描く感動の自伝。
内容説明
世紀末ウィーンで名声の高い詩人、作家、音楽家たちの作品に魂をゆすぶられて育った若きツヴァイクは、ウィーン大学を卒えてベルリン大学に学び、パリ、ロンドンをはじめ、各国を旅行しながら知識人との交流をくり返す。早熟な少年時代に出会った天才ホーフマンスタールの衝撃にはじまり、ヘルツル、リルケ、ヴェルハーレンとの交友、二つの大戦の同時代人であったロラン、ジイド、ヴァレリー、トーマス・マン、バルトーク、フロイト、ゴーリキーら知識人との回想を織り交ぜつつ、本書は、人類の偉大と悲惨をあますところなく伝える。
目次
精神的友愛のための闘い
ヨーロッパの心臓において
オーストリアへの帰還
ふたたび世界に
日没
ヒットラー、ここに始まる
平和の苦悶
遺書
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
64
近代西欧の汎ヨーロッパ精神の終焉をヒューマニストの視点から描く本書は、その「理性をもってしても時代の愚劣さを妨げ」られなかった知識人の悲劇を語るものではあるのですが、「人間のうちの最も人間的なもの」への時代と未来への信条告白ともなっていて、その透徹した視点と真摯な言葉は大変深い印象を残します。芸術は現実に対し何もなしえないと作者は書く。しかし、暴力と恐怖が支配する世界で「人間性」のために闘った言葉が、その美しいものが時を越えて私の胸に届き勇気を与え得るということ、それだけで十分なのではないかと思いました。2022/09/15
松本直哉
34
各国語に訳される人気作家から一転してユダヤ人ゆえのナチスによる焚書、亡命先の英国で大戦勃発とともに敵国人扱いされてさらに南米へ亡命。運命に翻弄された生涯にもかかわらず、最後のページの、自殺を目前にした自筆の遺書は美しい筆跡で周囲の人々への感謝が記され、錯乱のかけらもなく、最後まで明晰な理性の人だったのだと思う。ウィーンというヨーロッパの中心にあって他国の文化人と広く交わった著者は欧州を待ち受ける危機をいちはやく感じ取っていたにもかかわらずその警告は相手にされなかった。失われた故郷への限りない哀惜が胸を打つ2021/01/20
chanvesa
26
WW1後はツヴァイクにとって、部分的に記憶から排除したこともあったようだ。ハイパーインフレ下の生活を覚えていないとしている。偉大な芸術家にとって、地を這うような生活は過酷にであったろう。「政治に心をわずらわしたことはなかった(571頁)」のだから。それはR・シュトラウスと精神の高みにおいてある種の共通性があったといえまいか。ヒットラーとムッソリーニはファシズムや人類への罪という観点で同じはずだが、ムッソリーニは自著の良き読者(506頁)とわざわざ書いている。このオプティミズムが彼の悲劇性を際立たせている。2023/06/24
禄
25
「歴史は、同時代人には、彼らの時代を規定している大きなさまざまな動きを、そのほんの始まりのうちに知らせることはしない」(528頁)20世紀前半の激動の時代に、世界がどこへ向かうのか、当事それを正確に予見できた人はいない。第一次大戦前も、ヒトラー台頭時も事態がこれほどまでに悪化するとは誰も思わなかった。まだ理性への信頼があった時代だったからだろうか。より変化の速い現代でも、どこか楽観的に考えてしまう雰囲気があり、そうこうしているうちに今生きている世界が「昨日の世界」になるかもしれない、などと考えてしまった。2022/05/09
風に吹かれて
23
ツヴァイクが1940年に書いた本著作には彼が交流を深めた多くの人々が登場する。ヒトラーの軍靴がヨーロッパに響き渡ると故国オーストリアを離れ流浪の人となり、1942年、ブラジルで自死するのだが、イギリスにいたときオーストリアを離れたフロイトとの交流を描いている箇所は一編の静かな映画を見ているようだった。 前半で彼の青春とともにヨーロッパの青春を描き、後半では再び戦争に向かうヨーロッパと、そして彼自身の終焉を書いた。第一次世界大戦時の尽力を第二次世界大戦でも繰り返す気力がツヴァイクにはなかった。➡2020/01/31
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