出版社内容情報
辻まことはすばらしい詩文家であるとともに、他方生まれながら画才に恵まれていた。その上、むささび撃ちの名人で、ギターを手にすれば天下絶品、山スキーの達人、また独特の読書家で早くからダンテ、エラスムス、ショーペンハウエルの書に親しみ、晩年は空海の性霊集を枕頭の書とした。このような人がかつてこの世に存在したことが信じられようか。
《人を取除けてなおあとに価値のあるものは、作品を取除けてなおあとに価値のある人間によって作られるような気がする》と、辻まことは言っているが、それは彼自身のことでもあるようだ。その魅力あふれる人柄、話しぶり、そして生き方、伝えようもないそれを、辻まことの親友であった著者が伝えてくれる。《辻まことを知らなかった人も、本書によってあの高邁なエスプリ、飛翔するユーモア、自由の哄笑、人物から発する独特の爽やかな雰囲気を知るだろう…》(矢内原伊作)
宇佐見英治(うさみ・えいじ)
詩人、仏文学者。1918年大阪に生まれる。1941年東京大学文学部卒業。明治大学名誉教授。著書『縄文の幻想』(淡交社、1974、平凡社ライブラリー、1998)『辻まことの思い出』(湯川書房、1978)『一茎有情――対談と往復書簡』(志村ふくみと共著、用美社、1984、ちくま文庫、2001)『方円漫筆』(みすず書房、1992)『樹と詩人』『石の夢』(以上筑摩書房、1994)『戦中歌集 海に叫ばむ』(砂子屋書房、1995)『明るさの神秘』(小平林檎園、1996、みすず書房、1997)『死人の書』(東京創元社、1998)『見る人』(みすず書房、1999)編書 矢内原伊作『ジャコメッティ』(武田昭彦と共編、みすず書房、1996)訳書 リード 『イコンとイデア』(みすず書房、1957)バシュラール『空と夢』(法政大学出版局、1968)『ジャコメッティ エクリ』(共訳、みすず書房、1994)他。
内容説明
辻まことが没し、「思い出」が書かれて四半世紀、現在および将来の読者に、いっそうよく辻まことの姿が身近に感じられるよう、著者は新たに「追記と補注」を書き下ろした。それに、彼を偲んで書いた「多生の旅」ほかの短章、別に小論三篇。「何ものにもなるまいとする精神」の持主に捧げるにふさわしい、自由自在な風韻の漂う一巻。
目次
辻まことの芸術―「辻まことの世界展」カタログによせて
辻まことの思い出(湯河原の楓;辻まことの思い出;霧の湿原;追記と補注)
辻まことからの来信―宇佐見英治宛
辻まことを憶う
多生の旅
著者等紹介
宇佐見英治[ウサミエイジ]
詩人、仏文学者。1918年大阪に生れる。1941年東京大学文学部卒業。明治大学名誉教授
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