出版社内容情報
未知の世界と官能の悦びを求めてヨーロッパへ。克明な南アの現代史に重ねて女性を描いた傑作。
内容説明
「もし今年、あなたが忙しくて一冊しか小説を読めないとしたら、『バーガーの娘』を選ぶべきだ。私はこれまで、文学が人と世界を感動させたのは19世紀までだったと思っていたが、この本は、信じがたいことにそれを覆した」(デイリー・テレグラフ紙)「南アの歴史の描写は人を興奮させ、若くて勇敢な女性のポートレートは心にしみ込む」(ニューヨーカー誌)。ブッカー賞をはじめ、数々の賞に輝くゴーディマの本格的な長編小説をはじめて日本に紹介。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
秋 眉雄
18
下巻のローザ・バーガーから考えたこと。それは柵を越えなければ、柵の中は見えないということ。柵の中とは自分の国であり、自分自身のことでもあると思いました。この物語の数年後を捉えたものに、ピューリッツァー賞1991年ソウェトでの写真があります。そこには、暴行後に火達磨にされた瞬間の男が写されています。混乱の続く国。その後のバーガーの娘が知りたくなりました。表紙カバーにはムンクの版画が。ムンクと南アフリカの関係を少し調べてみましたが、ちょっと分かりませんでした。2018/11/25
てれまこし
4
ローザは父の亡霊から逃れるために、彼の最初の妻のいる南仏に飛ぶ。そこで純粋に過去でも未来のためでもなく、「今」を生きる自由を見出す。愛人を得て亡命を決意するんだが、ある事件をきっかけに南アに帰国してしまう。どこに行こうが、南アの白人という立場から逃れるすべはない。できることは一つ。自分の祖国で自分にできることをすること。そうしてローザは父の娘という運命を自らの意志で受け入れる決意をする。親子の和解が政治と絡まっていて本書の評価を分けるところであるが、これほど劇的でない形でなら親子の政治をぼくらも経験してる2019/12/31
ゐ こんかにぺ
0
アパルトヘイト・白人主義=資本主義・自由主義、反アパルトヘイト・黒人も平等=社会主義・共産主義という図式は思いもよらなかった。政府によるすり替えって往々にして起こるものなんですね。2012/04/07
qbmnk
0
南アフリカを出た主人公が過ごす南仏での夏の生活と恋愛がとても明るいので、次に訪れたイギリスでの予想外の出会いとその衝撃が重い。そしてヨーロッパに残る可能性がありながら南アフリカに再び戻りアパルトヘイトと社会闘争が当たり前にある世界で、周囲に巻き込まれながら過ごす主人公の変化が描かれている。軽やかな南仏での甘い生活と前後の南アフリカの重く緊張に満ちた日々との対比が鮮やかで、主人公の迷いや成長が浮かび上がる。特殊な環境にいる主人公を通して古今東西共通の人々の生きる葛藤を描きだしてるように感じた。2018/06/06