出版社内容情報
<老境> という <異国> に旅した女性の人生最後の叛逆。『独り居の日記』につづく円熟期の小説。
内容説明
老人ホームに“捨てられた”カーロの、人生最後の反逆が始まる。名作『独り居の日記』の著者が贈る小説の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
100
メイ・サートン(1912-1995)がこの日記に「死者の書」と呼んで亡くなったのは30年前のことだ。大学に行き、40年間教鞭をとり、中産階級の家に育った独り身の女性がナーシングホームに入所し、介護職の手荒な対応に人間の尊厳を喪わせていく憤怒がいくつも記されている。ここにあるのは被害妄想なのか、否、そうではないだろう。当時のナーシングホームは劣悪であったに違いない。→2024/09/01
新地学@児童書病発動中
75
以前読んだ『独り居の日記』が素晴らしかったのでこれも読んでみた。どんな人でも直面する老いの問題を正面から描いた作品。教師だったカーロは老人ホームに入居して自分の尊厳を守るために必死に戦う。カーロの感情や想い、老人ホームの様子があまりに真に迫っているので作者自身の体験を描いたものだと思ったらフィクションだった。衝撃的なのは心も体も衰えたお年寄りが物のように扱われるということ。それでもそんなお年寄りに優しく接する人もいて、その優しさがお年寄りにとってどれだけ救いになるかということが説得力を持って描かれていた。2013/11/17
ネギっ子gen
54
【私は狂気ではない。年をとっただけだ/私の願いは、眠ること、放っておいてもらうことだけ】『独り居の日記』作者が、51歳の時に書いた老人ホームの物語(原書は1973年刊)。<私がこうして文章を連ねるのは、強いて頭の中をはっきりさせ、自分のありかたを知るため。今では私にとっての現実とは、私の内部に確かめられることのほかなくなった。記憶力もすでにおぼつかない。正気を保つためには、手中にあるどんな情報のかけらもだいじにしなくては、と思う。日記をつけることを決めたのも、まさにそのためだ>。書いてさえいれば、と――⇒2024/11/08
yumiha
35
『勝てる読書』(豊﨑由美)で「老いるということ、そして死ぬということも戦い」と紹介されていた本書。76歳になったカーロが入所したナーシングホームは、老人の強制収容所だった。根性ナシの私にはとても耐えられない状況の描写に恐ろしくなったが、日本も同じなんだろうか?健康を損なっても誰かの介護を受けながら約十年ほど生きざるをえないと知っていたが、その間の尊厳なんて無きに等しい💦「死にむかうふときこそ、人が人であることの全面肯定の意志を表明するとき」(by髙村薫『太陽を曳く馬』)ならば、カーロの最後の決断もあり?2025/06/08
ぶんこ
24
心臓病になり、一人暮らしが出来なくなった76歳の元高校数学教師のカーロ。 兄夫婦との同居が難しくなり、老人ホームに入れられました。 このホームを運営するハリエットと娘のローズ。 人手が足りず、怒りっぽく意地悪になっているのが、辛いところです。 カーロ自身が「憎しみは心を腐らせる」と言っているように、心がドンドン死んでいく様子が描かれていて、読むのが辛くなります。 希望が持てず、愛されもせず、必要ともされていない・・・生きる気力がなくなっていくのが、分かってしまうのが怖いです。 2014/07/26