出版社内容情報
両親の家系から謎めいた事故死まで、多くの伝記素を収集して記号のモラリストを描いた初の伝記。
内容説明
『零度』から『明るい部屋』へ、両親の家系から謎めいた事故死まで、多くの伝記素を収集して、バルトの隠された物語・歴史を詳細にたどった、初めての刺戟的な伝記。
目次
1 戦争遺児
2 小さな紳士
3 二つの講和条約のあいだ
4 パリ‐ブカレスト
5 アレクサンドリアから『零度のエクリチュール』へ
6 演劇の時代
7 ついに高等研究院へ
8 構造は街頭デモに加わらない
9 「テル・ケル」誌の周辺
10 コレージュ・ド・フランス
11 形容しがたい、特質=価値のない生
12 死後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
22
無難にまとまっているな、と思う。毀誉褒貶の激しい、つかみどころのない人間に肉薄しオーソドックスな「伝記」ないしは「評伝」として成立させた(小谷野敦の仕事を連想した)。その書きぶりはなるほどロラン・バルトの仕事とは似ても似つかないものなので、あとがきで訳者がケチをつけているのも理解できないでもない。ただ、バルトの模倣で愛ばかり溢れたものを数多と読まされるよりはこういう面白くはなくとも真っ当に「評伝」しているものを読んだ方がいいだろうと思う。バルトだって笑ってこの本の存在を肯定したのではないか、と思ってしまう2020/04/05