出版社内容情報
西欧文化の基底をなし、現代に生きつづける古代ギリシアの一女性の原姿と変奏の諸相を描き出す。
内容説明
ヨーロッパ文化の基底をなし、今に生きつづける古代ギリシアの女性アンティゴネー。ヘルダーリン、ハイデガー、アヌイらを通してその原姿と変奏の諸相を読む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
23
生と死の宇宙論の逆転、それがクレオンの犯した罪、すなわち、死せるポリュネイケスの腐乱した肉体を地上にさらす一方で、掟に背いたアンティゴネーを生きながら地下に閉じ込めたこと、そしてこのソポクレスの洞察が、現代の我々にかくも生々しく訴えてくるのは、まさにまったく同じことがいままさに繰り返されていて、戦争と虐殺が無数の埋葬されない死者を置き去りにする一方で、生きている者は地下のシェルターや洞窟のなかで、終りのないように見える戦争の終わりを待ちつづけているから、という指摘に目から鱗が落ちるような思いであった。2024/05/11
ヤスミ
7
ギリシア悲劇で知られるアンティゴネーはテーバイ王オイディプスの娘であり妹。反逆者ポリュネイケスの埋葬を禁じた王クレオンの命に背き、兄ポリュネイケスを葬ったがゆえにアンティゴネーは自殺してしまう。アンティゴネーとクレオンの争いが数千年に渡り劇作家や詩人や哲学者等の想像力をかき立て続けて来たのはなぜなのか。王家の史実よりもソポクレスの創作した兄を葬るアンティゴネーの物語が受け入れられ影響力を持っている事はとても興味深い。今なお創られるアンティゴネー物語の末尾に連なるであろうビクトル・エリセの短編から手に取った2011/12/19




