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出版社内容情報
「窓」「時はゆく」「燈台」の三部から成り、時の移ろいと孤独な人間意識を描破した代表的長編。
内容説明
哲学教授夫妻とその子どもたちが過ごす夏の休暇、燈台に行く話が出るが結局行くことができない。スコットランドの島を舞台に、別荘での一日を、それぞれの登場人物の意識を通して語られる内面のドラマ。ウルフの代表作であり、20世紀文学の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
110
カトリック教的宗教観をひとたび持って読むと、ジェイムズとラムゼイ夫人の様子はピエタに思える。空中を浮遊する視点が、戦前の中産階級のある夕べを窓から覗き込む。第2部はまるでノアの方舟で嵐にのみこまれてしまったよう。第一次世界大戦で失われる命。そして戦後の第3部、灯台へと向かう親子。2021年サミットのあったコーンウォールの灯台を思いながらボートの行方を目で追う。照らす光もその下の波も、不動である灯台とこちらとをつなげてくれる何かだ。太い筆でリリーがキャンバスに一気に描く線が、力強いビジョンとして現れてきた。2023/08/26
Yui.M
12
ラムゼイ夫人たちの「意識の流れ」など読み終えてしまえばすっかり消え去っているに違いない。そう確信して適当なページを開いてみた。驚いたことにその部分は誰が登場するどんな場面なのか、数行読んだらよみがえってしまった(ちなみに無造作に開かれたのは、リリーがタンズリーに果敢にも「燈台へおつれ下さいませんか?」と問いかけた部分だったのでリリーの毒舌に思わず笑ってしまった)。かなり疲れた読書だったにもかかわらず、自分は想像以上にこの物語を楽しんだようでもあった。2019/11/13
mak2014
6
以前、文庫で読んだことがあるが全く記憶がない。ウルフをいくつか入手したので再チャレンジ。三部に分かれており、それぞれかなり印象の異なる文体。第一部ではラムゼイ夫人を中心に複数の人々の感情、思考、意識の流れを同じ段落内でもいきなりその主体が変わっていたりと細心の注意を必要とする文体。第二部では荒れ果てた家の描写。第三部ではラムゼイ夫人またはラムゼイ氏に対する登場人物の思いが描写されているが、文体としては分かりやすい。第一部の複雑な文体に慣れてくると非常にスリリングな読書体験に。途中わからない部分もあったけど2016/12/17
yurinessa
2
『精神的な』小説。人々の意識の変化が鋭く捉えられた純文学。情景が美しくて鮮やかな作品…なんだけどとにかく読みづらくてだいぶ時間かかって読了。多分、訳にもよるのかな?結局ラムゼイ夫人は、燈台へ行けなかった…。でも人の心は年月とともに刻刻と変化していくものなのよ、ラストは爽やかで好きだった。2022/02/13
ダージリン
2
ヴァージニア・ウルフを初めて読む。思考の流れが濃密に書かれている第一部を読みながら、全篇これだと正直きついと思ったが、第二部で一転する。第三部も場面の切換の巧みさや、ラムゼイ夫人の存在感を際立たせるやり方などは見事と思った。後半の澄明な哀切さとラムゼイ夫人の強烈なまでの母性というか女性性が何とも印象的。2016/09/14