出版社内容情報
「ナポレオンは死んだが、また別の男が出現して、モスクワでもナポリでも、ロンドンでもウィーンでも、パリでもカルカッタでも、連日話題になっている。この男の栄光は、文明の及ぶ境界に制限されるだけである。しかもまだ32歳にもならないのだ」。スタンダールの有名な書き出しである。
1823年、ロッシーニ31歳。「イタリアと音楽世界に神のように君臨する」ロッシーニと当時の音楽状況を、ロッシーニと同時代人であり、希代の音楽通(ディレッタント)であったスタンダールが活写する。
序文、導入部と46章、弁明からなる「ロッシーニ伝」と、43項目からなる「ディレッタントの覚書 -王立イタリア歌劇場」に、付録「モーツァルトの生涯と作品概要」「ロッシーニ覚書」「『ロッシーニ伝』詳細目次」3編、ほかにロッシーニ・オペラ作品リスト、索引が収録されている。
内容説明
「イタリアと音楽世界に神のように君臨するロッシーニ」と当時の音楽状況を本書で語り尽くす。アルプスの南と北、すなわちイタリアとフランスを中心にオペラの楽しまれ方の違いを、作曲家、出演者・演出・観客・劇場・街・国、そしてそれぞれの国における教育のあり方までも論じる。スタンダールによる当時のイタリア・オペラ評『ディレッタントの覚書』全文を併録し、詳細な訳注と索引を付す。
感想・レビュー
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kthyk
14
1823年秋にはロッシーニはすでに「セビリャの理髪師」などでその名声はヨーロッパ中に鳴り響いいていたが、かれより10歳近く年上のスタンダールはまだ「赤と黒」も「パルムの僧院」も書いていない。スタンダールの処女作は「ハイドン、モーツアルト、メタスタジオの生涯」(1814年)。「湖上の美人」はオペラというよりは叙事詩的な作品。オテロほどの激情はこのオペラにはない。ナポリのディレッタントの一致した意見ではロッシーニは湖上の美人によって初期の楽風に一歩戻った。タンクレーディ以降、彼は深みと力強さを増している。2020/12/30
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