出版社内容情報
1980年⇔現代日本。あの名作のモデルにした女性に再会したヤスオは、恋に落ちる……438の“註”+「ひとつの新たな長い註」。
田中 康夫[タナカ ヤスオ]
著・文・その他
内容説明
1980年から現代の日本へ、記憶の円盤に乗って時間の旅!日本の人口減少と超高齢化社会を予言したあの『なんクリ』から33年―大学生だった彼女たちは、いま50代になった。ある夏の日、自分の小説のモデルだった由利と再会したヤスオは、ふたたび恋に落ちる…日本社会の未来を透視する438の“註”に加え「文庫本化に際しての、ひとつの新たな長い註」を書き下ろし。
著者等紹介
田中康夫[タナカヤスオ]
1956年=昭和31年東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。1980年、『なんとなく、クリスタル』で「文藝賞」受賞。阪神・淡路大震災後、ヴォランティア活動に従事。信州・長野県知事、参議院議員、衆議院議員を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
63
前作とセットで読まないと、本作の企みは理解できない。過ぎ去っていった時間の分、人も社会も変わった。主人公は政治にコミットすることで、日本の未来を憂う。セレブな暮らしはそのままに、しかし忍び寄るすべてに対する衰退。この対比がブラックジョークのようであった。2018/07/14
ジロリン
14
既に読了済みだが、これ以上自分の中で”寝かせて”おいても仕方がないようなので…ハードカバーではオビに22人もの著名人の”賛辞”がずらりと書き並べてあったが、文庫では解説(?)の項にそれをわざわざ収録してあるのがなんともいじらしいw その中で、斉藤美奈子の「この男はまだこりてない!」というフレーズが抜群に秀逸…誉めてるとも貶してるとも、どちらにでも取れる言い回しの切れ味!多分、ヤスオちゃんは「誉められてる」と思ってんだろうなぁwと、思わずニヤリとする…と、まったく作品自体には触れないレヴューになりましたw2018/08/27
明智紫苑
11
デビュー作は「非政治的」な話だったが、そのデビュー作の巻末にある統計記事に作者自身の政治家体験が加わり、かなり「政治的」な小説になっている。前作ヒロインのモデルになった女性(とその女友達数名)が本当に実在するのかは、分からないが、彼女たちは「誰でもあり、誰でもない」存在なのかもしれない。2023/05/25
Nobu A
8
筆者とは10歳程離れているが、先日読了の「もとクリ」はバブル時代を懐かしく感じた。本著「いまクリ」は今が舞台。「記憶の円盤」がキーワードとして何度も登場。途中で数回出る「記憶の回路」の使い分けが不明。賛否両論だった前著は間違いなくタイトルを絶妙に顕在化し読みやすかった。今回は残念ながらメッセージが伝わらず、熟読玩味とは行かず。随所に物書きとしての粋な表現があったが、最終章に四字熟語が氾濫気味。もっと時間が経って読めば、「今」の世相を客観的に捉えて違う感想になるのかもしれないが、前作からの失速感が否めない。2021/01/18
asdfg
6
前作「なんとなく、クリスタル」では右ページ本文、左ページという構成で膨大な注釈が読みやすかった。しかし本作は一般的な書籍のように膨大な注釈が後ろに追いやられていたために読みづらすぎる。著者の個人的な感想のようなものも含む注釈と本文を合わせての作品のはずがまったくそれが生かされていない。2024/04/14