出版社内容情報
問題提起的なレインの最初の著作。人間学的傾向と対人関係論的傾向の合流した今日的な分裂病論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
62
23日読了。少なくとも三度目。初めて読んだのは、40年以上も昔の学生時代。どのようにして本書を知ったのか。当時は、我がことのように読めてしまって、どの症例も他人事とは思えなかった。 感想めいたことは既に書いた:2022/09/23
冬佳彰
13
この本も、購入して読んだ記憶があるが、内容はほぼ記憶にない。分裂病質を生み出す、人間関係のロジックのようなことに関して書かれていた覚えがある。小難しい理論を駆使する先進的な精神科医、みたいなノリで、そーゆー小難しさに憧れる年齢だった、それだけで読んだんだろうな。当時の本の裏表紙(だったか?)にあった著者近影が、いかにも新進気鋭っぽかったのを記憶している。なんだ、本当にイメージだけじゃん、俺は。
またの名
9
偽の自己を演じているのに気づかない治療者の間抜けぶりにアホらしくなり、「声」が何を語っているか問われた分裂病者が「あなたは馬鹿だ」と答えた有名な逸話等、反精神医学的な細部のアイロニーが痛快。大筋は、所謂ヤマアラシのジレンマに怯える分裂病質者は偽の自己を演じることで他者のまなざし(ラカン的には対象a)の魅惑と恐怖から真の自己を防御し、偽と真の自己の分裂が極端になると外部の声や別人格にまで自己疎外が進むという見立て。明敏な洞察と機転に満ちた書物であるものの、説明が成功し過ぎて複雑な現実を捉えきれてない恐れも。2014/04/01
日曜読書人
8
「石化」とは凄い表現。2018/11/07
朝野まど
6
若干28歳の天才が綴る、分裂症患者の心理分析。この世界のどこにいても「くつろぐ」ことが出来ず、世界と自分に、そして自分と自分との間にも断絶を感じている人種があるのだ。「言葉が患者を引き裂く」と言い、専門用語の使用すら慎重になるレインには、「くつろげぬ」人の存在を肌で分からせようと、言葉に肉を添えて訴えかける。受肉。単なる紙の連続体に終わることなく、本全体が佇まいをもって語る分裂症の分析は、医学、というよりは哲学という言葉が相応しいように思えた。2012/07/27