内容説明
生物学、形質人類学において〈ヒト〉は社会的・文化的コンテキストからはずれたところで考察され、動物に対するのと同じ図式によって理解されてきた。こういう状況のもとで生まれたのが〈人種〉の概念であり、これが伝統的人類学の基盤となった。しかし、血液型の発見によって、集団遺伝学的な分析方法をヒト種に適用することが可能になり、その結果、複数の人種は存在しないことが明らかになった。にもかかわらず、あらゆる生物学的事実から見放された人種神話が生き長らえているのはなぜなのか、著者は、血液型学と集団遺伝学の知見をもとに、人種主義の起源と歴史をさぐり、黒人奴隷制度と反ユダヤ主義という二つの人種差別に徹底したメスを加える。
目次
第3部 人種と人種主義(人種の意味とその限界;血液型学の既知事実;人種の非実在と人種神話の存続;人種主義の起源と歴史;黒人人種差別と奴隷制度;人種主義と反ユダヤ主義;混血)
第4部 未来(自然誌のデータ;統合の伝統的枠組の欠陥;危機;未来学)