内容説明
オナニスムについて一貫した思想的考察を加えたこの書は、おそらく世界の嚆矢であろう。宗教的罪として、道徳的悪として、医学的病いとして、それはいかなる処遇を受けてきただろうか?またフロイト以降の現代思想は、それをどう理解し、判断しているか?時代の隠喩(メタフォール)としてのオナニスム、この隠喩が隠喩でなくなる次元が、現代であるといえるだろう。その意味の解読が本書のテーマである。
目次
1 侵犯
2 自然―ハヴロック・エリス
3 代償―ジグムント・フロイト
4 経験
規範―キンゼイからマスターズ ジョンソンへ
5 隠喩―ジャック・アタリ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなた
7
オナニーは思い出の整理なのだと語ったのは寺山修司だ。その整理がつかず自責しながらオナニーをし続けたのはウィトゲンシュタイン。デリダもオナニーについて思索を展開しているが、謹厳なカントまで一説をうっているとは知らなかった。本書はオナニーを他者論からとらえたものだ。ただオナニーを現象学的にとらえてもジェンダーの視座から足をすくわれそうな気がするので赤川学のようにやはり文化史的に系譜学としてオナニーの言説をしこしこと丹念にたどっていく方がいまの時代必要なのだと思う。ちなみに私は射精遅延者である2010/07/21
mori-ful
1
「残念なことに、あれほど身体に注目したモーリス・メルロ=ポンティでさえ、自慰そのものを研究の対象にしたことはなかった」(「他者への身震い」)。「他者への身震い」の章は自慰の現象学的分析。メルロ=ポンティ、サルトル、フッサール、ビンスワンガー、アンリエーそして大森荘蔵『物と心』、デカルトを援用して意外に哲学的。自慰も性交も性的他者を前提とするが、自慰の場合は性が他者に先行し、性交の場合は他者が性に先行する。売買春論にまで展開するのには驚いた。自慰が市民権を得たのと売春が地下に潜ったのは同じ時期。異性愛前提。2025/05/29
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- 和書
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