出版社内容情報
本書は,発生生物学の歩みを踏まえ,主として脊椎動物の発生を理解するために必要な74のトピックを選び,見開きで簡潔に解説したテキストである.
第1章から第5章までのトピックはおおむね実際の発生過程をたどるように並んでおり,通読することで受精から老化までの一連の流れを体系的に学ぶことができる.発生生物学の基本概念や研究手法については,第7,8章にまとめて解説するという形式をとっている.各節では,歴史的背景や医学的な応用可能性についても幅広く理解してもらうため,発見に至った経緯や関連する疾患に言及しながら解説した.
トピックの構成には,いくつかの工夫を凝らした.第1章では,かつて発生生物学の最重要トピックであった「受精と卵割」を導入(第0節)として扱い,その後起きる「エピジェネティック・リプログラミング」と「胚性ゲノム活性化」という現象を詳しく解説した.これらの現象は,高度に分化した配偶子(生殖細胞)の性質を消去し,胚が自身の遺伝情報をもとに自律的に発生を開始するために重要なプロセスである.そこで本書では,このときを「動物発生の真の始まり」と捉えている.こうした見方は徐々に現代の発生研究者の間に広まりつつあるが,類書では依然として解説が不足しており,本書の大きな特色となっている.
本書のもう一つの特徴は,胚発生期以降にも多くのトピックを割り当てて解説したことである.かつての発生生物学では,出生前の胚がおもな研究対象であったが,現在では発生をより広い視点でとらえ,個体の成長や老化も含めて一生にわたって続くものだとする考え方も出てきている.こうした見方を支えるのは,胚だけでなく成体組織にも存在する幹細胞の性質を調べる幹細胞生物学や,環境因子が生物に与える影響を調べる毒性学,さらにはエピジェネティクスといったさまざまな分野との融合的な研究である.その具体例を第5章と第6章で詳しく解説し,現代発生生物学の最前線に触れられるように工夫している.
【目次】
0章 はじめに
1章 発生の始まり ー多能性獲得ー
0 受精と卵割
1 母性-胚性遷移ー発生の始まりー
2 エピジェネティックリプログラミング(I)ー哺乳類ー
3 エピジェネティックリプログラミング(II)ー魚類ー
4 胚性ゲノム活性化(I)ー過程ー
5 胚性ゲノム活性化(II)ー制御ー
6 分化多能性(I)ー遺伝子制御ネットワークー
7 分化多能性(II)ーエピゲノムー
8 胚体外組織の発生
2章 体軸と三胚葉の形成
9 体軸形成(I)ー前後軸ー
10 体軸形成(II)ー背腹軸ー
11 原腸形成と三胚葉
12 原腸形成運動
13 中胚葉誘導
14 オーガナイザーの形成と体軸誘導
15 神経誘導 ーオーガナイザー因子の作用機序ー
16 神経堤細胞の誘導と移動
17 体軸形成(III)ー左右軸ー
3章 胚葉のパターニング
18 神経の前後軸パターン ー2シグナルモデルー
19 神経の前後軸パターン ー頭部形成ー
20 体節のパターニング(I) ー分節ー
21 体節のパターニング(II) ー分節後の分化ー
22 神経のパターニング(I)ー神経管形成ー
23 神経のパターニング(II)ー前後・背腹パターニングー
24 Hoxコード
4章 器官形成
25 中枢神経系(I)ー神経発生ー
26 中枢神経系(II)ー神経回路形成ー
27 脳下垂体
28 皮膚と派生器官
29 プラコード由来の感覚器官
30 頭部骨格と咽頭弓
31 体幹部神経堤細胞由来の器官
32 骨格筋と骨
33 四 肢
34 心 臓
35 腎 臓
36 血管と血球
37 気管と肺
38 消化管
39 肝臓・膵臓
40 副腎・胸腺・甲状腺・副甲状腺
41 脂肪組織
42 組織幹細胞と幹細胞ニッチ
43 性決定(I)ー生殖細胞ー
44 性決定(II)ー生殖器官ー
5章 後胚発生と環境要因
45 変 態
46 環境と発生(I)ー栄養環境とDOHaD仮説ー
47 環境と発生(II)ー表現型可塑性ー
48 環境と発生(III)ー催奇性因子ー
49 エピゲノム遺伝
50 発生シグナルとがん
51 細胞老化と個体老化
52 幹細胞の老化
6章 発生生物学の最前線
53 単一細胞遺伝子発現解析
54 単一細胞解析がもたらしたもの
55 幹細胞生物学とiPS細胞
56 オルガノイド
57 再生生物学
58 メカノバイオロジー
59 発生生物学と合成生物学の融合
60 Evo-devoの隆盛
7章 付録(I)発生生物学の基本的概念
61 ショウジョウバエ
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