出版社内容情報
16世紀以来、フィリピンはスペインとアメリカという二つの帝国による植民地統治を受けた。すなわち、この国の近代化も「帝国」の植民地支配と「民族主義」こと現地社会と経済の立ち上がりとによる相互関係、そして常に文脈として存在し続けた経済の中にその道筋をたどったことを意味している。医療・公衆衛生政策もまた二つの帝国統治の特徴を反映させた政策領域として展開し、現地社会にもほかの政策領域と比較して深く介入することになる一方、民族主義は、妥協や反発を繰り返してそうした介入主義に影響し、第一次世界大戦後にはフィリピン人が医療政策のイニシアティブを掌握していった。19世紀から20世紀、近代化・戦争・民族主義が渦巻いた時代のフィリピンにおける医療史を、経済・社会的な文脈を踏まえ描き出す一つの試み。
【目次】
序章 フィリピン医療史の位相
1. 本書の課題
2. 世界経済におけるフィリピン
(1)フィリピンとスペイン
(2)フィリピンの近代化と経済開発
(3)フィリピンとアメリカ
3. フィリピンにおける疾病
(1)人口・疫学転換
(2)疫学的動向
4. 理論的課題――帝国医療と開発原病を超えて
第Ⅰ部 スペイン統治・医療・現地社会
第1章 修道会と軍隊の医療
1.スペイン統治と施療院
2.施療院とハンセン病
3.近代的病院の形成
第2章 感染症と公衆衛生
1.農村の経済開発と感染症
2.都市の経済開発と感染症
3.天然痘・コレラと公衆衛生
(1)都市における衛生行政
(2)コレラと海港検疫
第3章 フィリピン人西洋医の形成
1.スペイン人西洋医とフィリピン人西洋医
2.帝国医療の具体的諸相
3.帝国医療と民族主義
第Ⅱ部 アメリカ統治・医療・現地社会
第4章 フィリピン・アメリカ戦争と感染症
1.熱帯医学(tropical medicine)の展開
2.都市社会におけるコレラ流行
(1)公衆衛生制度
(2)戸別検査の展開
3.農村社会におけるマラリア流行
(1)ゲリラ戦と強制集村政策
(2)農村における感染症
4.アメリカ軍における感染症
第5章 アメリカ統治前期マニラの公衆衛生
1.公衆衛生政策と統治
(1)公衆衛生政策の思想的背景
(2)衛生慣行への介入
2.マニラの新たな医療・衛生
3.都市空間の再編
第6章 アメリカ統治後期における農村保健
1.アメリカ資本のための保健
2.フィリピン人のための保健
3.農村保健の変化と摩擦
第Ⅲ部 インフラストラクチャーと公共サービス
第7章 マニラにおける上下水道の整備
1.スペイン統治末期のマニラ
2.アメリカ統治下の上下水道と財政
3.都市化と上下水道
第8章 アメリカ統治下の国立病院
1.国立病院設立の背景
2.マニラにおける国立フィリピン総合病院の事例
(1)設立の経緯
(2)経営分析
(3)医療従事者構成
(4)入院患者
3.国立地方病院の設立
(1)病院の地方分布
(2)国立地方病院
終章



