出版社内容情報
生化学と臨床医学とのつながりをくっきりと浮かび上がらせてくれるテキスト
生化学は、多くの疾患に関与する重要な学問分野である。学生は医学教育の初期段階の基礎科目として生化学を学び、代謝経路や酵素名などの膨大な知識をぎゅうぎゅうと頭に詰め込むが、臨床教育の段階でその生化学的な知識を疾患と結びつけて学ぶことは容易ではない。しかしながら臨床医学の現場においては、目の前の患者が訴える症状に対する適切な治療法を選択するために、症状・徴候をもたらす疾患とそれを裏付ける生化学的概念との結びつきを理解しておく必要がある。
本書は「症状」から生化学を学ぶという、新しい切り口で書かれた教科書である。臨床現場でよく出合う10症状の下にそれぞれ5つの症例が示される。症状の提示から臨床的思考の展開、検査オーダーの妥当性とその結果の解釈へと続き、最後に症状の背景にある生化学的変化が詳細に解説される。医師の思考プロセスを学生が追体験できるような構成が特長である。各症例の終わりには学習のポイントを整理した「まとめ」と、医師国家試験、CBTやUSMLE STEP1の対策にもなる解説付きの復習問題が用意されている。
本書は、統合型カリキュラムの教科書としても有用である。章のタイトルには症状名のみが記載されており、最初から診断名がわからない構成にすることで、学生が臨床推論の力を高めることができるよう配慮されている。一方で、巻末には取り上げられた疾患一覧や詳細な索引もあり、必要な情報にすばやくアクセスできるようになっている。
広範で複雑な生化学をよりよく理解するため、臨床推論能力を向上させるために役立つ一冊である。
【目次】
1章 息切れ
2章 黄疸
3章 下痢
4章 あざ
5章 疲労
6章 成長障害
7章 乳児期および幼児期における発達の遅れ
8章 痛風
9章 精神状態の変化
10章 肥満
付録A 復習のための問と解答
付録B 本書に掲載されている疾患一覧(五十音順)
索引



