出版社内容情報
グローバリゼーションを経た21世紀の今後において、風土を思考することは今も可能なのだろうか? ――その答えはイエスである。ただし、国境や定住を前提として、非正規的なものとして移動や越境や境界を語ってきた20世紀のナショナルな発想からは身を引き離さなければならない。そのとき、グローバリゼーションによって均質化されたかのように見えていた世界は、コンフリクトに満ちた不均一で異質な諸空間の隣接するプラネタリーな領域として現れる。本書によって、境界、移民、伝統、観光は新しい相貌で書き換えられるだろう。
【目次】
第1章 日常における境界構築と人の移動の政治理論――国民国家的な国境観を問い直す
1 国境開放論争と方法論的ナショナリズム
2 関係論と日常における境界構築
3 国民国家の境界を歴史化する
4 妊娠する越境者と国境管理による知覚の生成
5 おわりに――「移民」 カテゴリーを撤廃した入国管理の可能性
第2章 海の基盤的コミュニズムからはじまる救助と越境の「道」――海の物質性、海の境界化、移民船、(対抗)ロジスティクス
1 海の物質性と基盤的コミュニズム
2 境界としての海、救助と越境の海Ⅰ――死にさらされる移民と海を監督する救助の眼
3 資本のロジスティクス――海上の円滑かつ迅速な移動
4 境界としての海、救助と越境の海Ⅱ――人命救助のロジスティクスから移動・越境の対抗ロジスティクスへ
5 おわりに――「水分以上の存在論」へ
第3章 境界は越えるべきものなのか――日本という〈辺境〉における越境の可能性
1 境界がつくる自己
2 日本人の発想
3 なぜ私は、この時代、この国に生まれたのか
4 おわりに――互いの違いを知るという〈越境〉
第4章 二一世紀日本の観光論――重要な人間の営みとしての本質を考える
1 生活の視点から構造的に捉える観光
2 二一世紀の日本の観光を取り巻く社会状況の変化
3 二一世紀の日本の観光が進む道
4 観光振興に向けた方法論の検討
5 歴史から示唆を得る――過去から見た二一世紀の観光論
6 おわりに――観光の本質的意義が問われる二一世紀
責任編者解題
引用・参照文献
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