内容説明
「地震大国」日本の地下の堆積層や沿海のヘドロ層、そして深海の堆積盆地にはメタンが豊富に存在している一方、地震によって解放されるエネルギーは巨大であるため、もし強い地震動や大津波が発生すれば、閉じ込められていたメタンを解き放ち、地表・海面に湧出させる。賦活化されたメタンは地震発光などの物理化学的諸現象を引き起こす実体を担うことが、歴史地震史料を辿って明らかとなり、さらに地震火災・津波火災といった甚大なジオハザードに連鎖する実像も解明されつつある。本書では、地震・津波によって湧出したメタンとそれがきっかけで引き起こされるジオハザードのメカニズムを考究することで、このようなリスクに備える防災・減災への対応の重要性を指摘し、社会に警鐘を鳴らす。
目次
第1章 歴史地震史料からたどる地震・津波の“諸現象”
第2章 地震“諸現象”の世界を見る
第3章 地震・津波に伴った諸現象
第4章 地下から火炎噴出と火災―歴史地震史料からたどる
第5章 津波による火災
第6章 どうするメタン・ジオハザードの防災・減災
第7章 ラボ実験―仮説の検証
感想・レビュー
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月をみるもの
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「奥尻島や石巻で津波に伴って起きた火災や、関東大震災の時の火災旋風が、地震に伴うメタン湧出の結果なのではないか」という仮説の提唱と検証。こないだ長野に行ったときに博物館で知った松代群発地震に伴う発光現象や善光寺地震+大火災の話にもつながっていく。能登の地震のニュースを見ながら読むと、我々は「なにを知らないかを知らない」のだなあ、と実感する。ホモサピは、年に1回しかできない農業の知識だってこんなに蓄積してる。100年に一回しか起きないイベントの情報だって、うまく継承して大きな「知識」に育てていけるはずだ。2024/01/03