内容説明
オリンピックは魔物である。選手たちにとって、オリンピックで金メダルを獲得することは、世界新記録を打ち立てるより価値があるかもしれない。国家にとっても、メダルの数は国力の反映である。国家指導者は、自国選手の活躍に酔う国民の興奮を、容易にナショナリズムの高揚へと誘導した。オリンピックには、人種問題、分断国家、テロ、国威発揚など国際政治のあらゆる要素が含まれている。オリンピックを追うことは、政治の一角を追うことでもある。
目次
第1章 近代オリンピックの開始
第2章 日本のオリンピック初参加
第3章 東洋オリンピックと「満州国」参加問題
第4章 「前畑ガンバレ…」―ベルリン大会の光と影
第5章 幻のバルセロナ人民オリンピック
第6章 「民族の祭典」とリーフェンシュタール
第7章 「紀元2600年」―幻の東京オリンピック
第8章 日本不参加のロンドン大会
第9章 東京オリンピック―24年目の悲願、日本晴れの開会式
第10章 人種問題、テロリズムとオリンピック
第11章 分断国家とオリンピック
第12章 一番安上がりな対米協力―モスクワ大会ボイコット
第13章 名古屋は何故敗れたか―1988年ソウル大会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kame
1
オリンピックの政治介入、政治利用をしない…。これがいかに無謀な机上の空論であるかがよくわかった。政治学者の視点から、歴史をなぞる形でオリンピックについて語られており、人々がどのような思いでオリンピックを作り上げ、そしてそこを目指してきたのかという感情的側面もしっかり盛り込まれており、スポーツ好きとしてはかなり読み応えのある内容だった。各章ごとのテーマもはっきりしていて読みやすい。個人的に人種・宗教とオリンピックに関する記述が興味深かった。2017/06/02
AKI
0
2本ある卒論構想の片割れのベースになる本。北朝鮮にとってオリンピックは「民族統一」の象徴なのだけれど、ソウルの時は「体勢競争」の象徴にもなってしまった。この奇妙な北朝鮮にとっての「オリンピック」を研究してみたい