内容説明
狭い地中海を隔てて、ヨーロッパ世界と長い間拮抗してきた北アフリカのイスラム世界。魅惑的なイスラムの風景をちらつかせ、我々を手招きしてきた「陽の沈む国」マグレブとその一国チュニジア。そこにはアラブの香りとそれに加わる先住の民ベルベルの土着の匂いが共存同化し、地中海的特徴を示すイスラム世界を現出している。そこでは、隠やかに推移する自然に抱かれてきた日本の地とは異なり、灼熱の太陽と乾いた大地に囲まれた自然に対し安息の地を囲い取り、人工の手で自然を覆い隠すことを理想郷を造る上での出発点とし、同時に天空の神と個のダイレクトな係わりを基本的な在り様とする、彼らのすみかづくりの原点を見ることができる。
目次
イスラムの風景
マグリブのイスラム都市と集落
アラブイスラムの住まいと街
ベルベルイスラムの住まいと集落
人と生活
旅の風景
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
288
チュニジアの街々とその建築物をめぐる巻。チュニス、スース、シディ・ブ・サイドなどの地中海沿いの白い街である。たしかにそこはアラビックな空間なのだが、対岸のアンダルシア(スペイン)の街もまた同質の白い漆喰で塗り固められている。さらには、遠くオストゥーニ(イタリア)やエーゲ海の島々もそうだ。にもかかわらず、チュニジアのそれらは幾分か異質な風情を漂わせる。先入観もあるのだろうが、それがアラブの文化の息吹なのだろう。なお、マトマタなどのベルベル集落は、これらとは全く違って砂漠の中の小さな要塞都市といった風情。2023/11/04