内容説明
20世紀の巨匠ル・コルビュジエの生涯を辿り、代表的な作品を訪ねる巡礼記。西欧の理性的な精神を受け継ぎ、工業社会の新たなパルテノンを樹立した初期の作品サヴォア邸、後年になって近代建築への反省をも含め、自然の秩序に基づく人間の尺度によるロンシャン礼拝堂などの創造の過程を探る。
目次
1 ジュラの森の幾何学―ラ・ショー・ド・フォン
2 理性の光―パリ・絵画と建築
3 建築的散策路―ラ・ロッシュ邸1923
4 澄明な時間―サヴォア邸1929
5 風景の音響学―ロンシャン礼拝堂1955
6 幾何学の風景―ラ・トゥーレット修道院1959
7 人間的寸法―カップ・マルタンの小屋
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
309
この巻はいよいよル・コルビュジエの登場である。建築の専門家を含めて、多くの人が20世紀を代表する建築家とすることに異論はないだろう。彼は1887年にスイスで生まれ、その後は主にフランスで活躍したが、その魂の始原はギリシャにあった。彼の建造物のほとんどが白を基調としているのもその故であろう。色彩の白とともにコルビュジエの建築に特徴的なのは光。清澄な光との交歓の中でこそコルビュジエの建築物は映えるのである。公共の建物以外に個人宅もあるが、では住みたいかというと、ラ・ショードフォンのファレ邸(最初の作品)⇒2023/03/09
金吾
12
有名な建築家の話ですが、建築の部分は余りわかりませんでした。しかし所々にあるスケッチが良かったです。2020/12/30
nbhd
10
世界遺産「ル・コルビュジエの建築作品」のひとつであるロンシャン礼拝堂のモチーフは「拾ったカニの甲羅」。何冊かコルビュジエ本を読んできて、やっと、その「カニの写真」を見つけた。『1946年、ニューヨーク近くのロングアイランド海岸で見つけた蟹の殻〈それを見つけて、驚きをもって気がついた。いかにそれが強かったか。全体をかけてもビクともしなかった〉。詩的感情を起す物品』。蟹好きの人はぜひ。2017/09/21
ぶらり
2
ル・コルビュジエの作品中、サヴォア邸は抜きん出た存在感。1929年の作品が今なお近未来性を示す。パリ郊外のこの家は、ナチスドイツの侵攻によって廃墟と化す。戦後、一帯を大学として開発する際に取壊しも検討されたが、保護運動により修復保存された。今や廃れた過去の傷跡は無く、モダニズムの傑作として個人邸宅の機能性とデザイン性を追及した「白い箱」の極地として、現代建築に与えた影響は計り知れない。邸宅の傑作でありながら、人が住んだのはわずかな期間だったという因果、家は、孤独なモニュメントとして憂愁を帯びて佇んでいる。2011/04/04