内容説明
諸君、戦争である。入り江に地獄の叫びが響く。猛る軍事、煽られる有事、人の収壊…社会の全域を侵蝕する「戦争」に、魂の言葉だけが抗いうるだろう。
目次
1(入り江の幻影)
2(「新たな戦前」に際して―『1★9★3★7』国際読書会の意義;日々に朧なる「9条」の幻視―とても気疎い戦争の時代に)
著者等紹介
辺見庸[ヘンミヨウ]
1944年宮城県石巻市生まれ。70年共同通信社入社、北京特派員、ハノイ支局長、外信部次長などを経て96年退社。78年中国報道により日本新聞協会賞受賞、87年中国から国外退去処分を受ける。91年『自動起床装置』で芥川賞、94年『もの食う人びと』で講談社ノンフィクション賞、2011年詩文集『生首』で中原中也賞、12年詩集『眼の海』で高見順賞、16年『増補版1★9★3★7』で城山三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hasegawa noboru
19
90年代の吉本隆明との出会いを回想しながら、天国にいる吉本と対話を試みているかのような小文(「絶対感情」と「豹変」ーー初出『文學界』2014年8月号)がある。<「太平洋戦争の敗戦から現在までの共同経験を綜合すれば、わが国の大多数の感性は、特異な<豹変>の型をもっている><直接にはGHQによる対日占領政策とそれへのニッポン官民のおどろくばかりのひれ伏し方と従順さを見聞した経験をもとにしているにせよ、支配という公的状態に身をもって歯向かう発想がそもそもニッポンの多数者にはない、という>吉本の指摘を取り上げ、2023/08/20
Mc6ρ助
17
『もしも神がこの世に存在しないとしたら…… の仮説はドストエフスキー畢生の大問題であった。・・『カラマーゾフの兄弟』においては無神論者イワンの哲学 「神がなければ、すべてが許さる」が導きだされたのだった。あらためて仰天する。 21世紀現在とはすでにして 「神なくして許されざるなし」の結果、到達した惨憺たる曠野ではないのか。(p62)』アベノオトモダチのソコノケ政治の正体が腑に落ちる。かつて人類の進歩と調和を信じた爺さまは神を信じずとも無神論者に分類されるわけではないかも知れない。2023/09/15
kentaro mori
3
少し前のことがもうこれほどまでに思い出せなくなっている。この悲惨、破局にならされている。●ふと、「恥」について思う。「人間であるがゆえの恥辱」ということ。体内の暗がりを一瞬の光で照らすように、われ知らず省みる。「恥」と「誇り」が微かに明滅する。それらはかつて、たがいに弾きあう別種の感情だったはずである。しかし、いまは恥辱と栄光が、人間という容器のなかで融けあっているようだ。[•••]あれからいったい、なにが起きたのか。五輪に沸き立ついまは人びとの脳味噌が一斉に収縮でもしたかのように、おかしなことが起きてい2023/08/11
クッシー
0
辺見庸の本を読んでいるとクスッと笑ったり、暗い気持ちになったり揺さぶられる。2024/11/19
星辺気楽
0
老人の譫言。2023/09/30