内容説明
明治を代表する知識人として活躍した作家・森〓外。没後100年を経て、読み継がれる魅力を再検証。平野啓一郎、伊藤比呂美、瀬戸内寂聴ほか各界の論客41名による決定版!
目次
1 読み継がれる〓外文学(個人と国家、そして諦念(平野啓一郎 小説家)
越境する文学(多和田葉子 作家) ほか)
2 〓外の翻訳(多数の翻訳作品(松永美穂 翻訳家)
文語体の古雅に酔う(森まゆみ 作家) ほか)
3 藝術へのまなざし(近代詩の父(高橋睦郎 詩人)
歌人としての足跡(坂井修一 歌人) ほか)
4 医学、軍医、官吏の道(軍医として赴いた戦地(成田龍一 日本女子大学名誉教授)
貫いた医業との両立(夏川草介 作家・医師) ほか)
5 家族のなかで(モノグラムの謎(今野勉 テレビ演出家)
結婚脱出の夢(持田叙子 国文学研究家) ほか)
鼎談 〓外を知る三冊(持田叙子、門井慶喜、森まゆみ)
対談 なぜ、〓外に惹かれるのか(伊藤比呂美、永井愛)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
110
没後百周年記念、鴎外好きにはたまらない豊かな一冊。何といっても41名の執筆陣が素晴らしい。作家としてだけでなく、翻訳家、近代詩の父、歌人の顔や、美術、音楽への影響なども示されている。更に、軍医、衛生学者、帝室博物館長の業績とともに、家庭人としての一面も垣間見れる。印象的なのは、鴎外が女性を描く時のフェアな姿勢を称賛する声。更に、多くの人が絶賛するのが文体。「鴎外は文体は素晴らしいが、物語を生む力は高くなく、多くは元になる欧米の話などを換骨奪胎して小説に仕立てている」(森まゆみ)は一寸言い過ぎだけども…。2023/04/14
みつ
23
(今回も「つぶやき」欄に感想を書いてしまったので、こちらに若干手直しのうえ再掲します。) 没後百年を記念して、鴎外にゆかりの深い(あの読みにくい史伝三部作を連載)毎日新聞の月1回、計42回の記事をまとめたもの。歴史物を含む小説、史伝、翻訳小説・戯曲、詩、短歌のほか、音楽、美術、衛生学、脚気論争、家族など、各著者ごとにひとつのテーマ、ほぼ一冊の著書に絞る形で書かれている。「物語を生む力は高くない。」(p142)と評される通り、小説に関しては同時代の漱石の人気とは比すべくもないが、幅広い分野にわたる➡️2024/10/17
kochi
19
森鴎外没後100年を記念して、毎日新聞に42回に渡り連載された記事の単行本化。複数の書き手(豪華絢爛)により、重複を厭わずに取り上げられた作品群(人気は『舞姫』と『渋江抽斎』)を軸に、それぞれ鷗外が論じられているが、続けて読むと不思議に各人の真剣さ具合や鷗外愛の程度も透けて見える気がする。小説だけでなく、翻訳、詩歌等、多岐にわたる創作活動や、演劇や美術界との関わり、軍医(脚気論争も含む)や帝室博物館総長としての活動、そして家族との関係など、鷗外の360度をサラッとだけど知ることができ、良い入門書かと。2023/03/31
amanon
6
本書でも言及されている通り、漱石に比べると馴染みの薄い鴎外。それだけに一般的に知られていない様々な側面があることに驚愕。とりわけ、元老山縣有朋と交友がありながら、その対局にある大逆事件の顛末に心を痛めたというエピソードには、社会的地位と素の自分との間に横たわる矛盾に葛藤する姿が想像される。また、子煩悩でありながら、妻との葛藤に悩まされたという鴎外の家庭人としての側面にも、意外という印象が。特に長女茉莉のエッセイを読んでみたくなった。後、気軽に手に取れる鴎外の著書が少ないのを痛感。何とかならないものか。2024/04/25
飼い猫の名はサチコ
5
2022年は森鷗外没後100年だった。そのタイミングで毎日新聞学芸部が企画した月1回の連載が書籍化されたもの。文京区の森鷗外記念館には2回行ったことがあり、鷗外の幅広い仕事ぶりに目を丸くしたものだけれど、分野の異なる多彩な執筆陣が、様々な視点で森鷗外のことを語ってくれる本書は、記念館10回分くらいの濃度を感じる良書だった。森鷗外を読んでいなさすぎた、勿体ない、と改めて思う。2023/04/04