内容説明
何も失っていない人などいない。台所から人生の愛おしさを描く感動ノンフィクション!22人の再生の物語。
目次
1(酒と金魚;「これ、カンドー?」 ほか)
2(名建築は東京一不便な台所;本と恋と団地ごはん ほか)
3(旅立つ前の最後の一杯;料理写真をつまみに酒を飲む男 ほか)
4(自分の機嫌は自分でとる;離婚とコロナと餃子が変えた未来 ほか)
著者等紹介
大平一枝[オオダイラカズエ]
長野県生まれ。編集プロダクションを経て1994年独立。市井の生活者を独自の目線で描くルポルタージュコラムおよびエッセイを執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
506
このドキュメンタリーの中で、いったい何人の方が亡くなり、離婚されているのだろう。結局ソコが人間にとっての究極のお別れ、っていうことなんだろう。究極があれば、そこには必ずドラマが生まれる。それでも人は生きていかなきゃならないし、食べていかなきゃならない。その中心が台所(キッチンではなく)ってわけ。人んちの台所、覗くの楽しいよね、でもわたしのは見せたくない(笑)2024/02/07
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
71
(2024-113)【図書館本】台所をキーアイテムとして22人の人生を綴るドキュメンタリー。10人いれば10通りの台所がある。今回のテーマは「喪失と再生」だと言う。人生の中で大切な何かを失い、そこから新しい人生を歩んでいく姿。精神疾患を持つ実母との縁を切り新しい人生を歩んでいこうとする若い女性の話が印象に残った。連載記事の制限があるから仕方ないけど、もう少し一人一人のエピソードを深く書いてあるともっと良いなぁと感じた。★★★+2024/08/19
pohcho
62
台所の写真とともに綴られる、東京に暮らす22人の物語。喪失と再生」がテーマということで、かなり重い内容だった。同姓カップルの離婚(?)訴訟、毒母と縁を切った21歳女性、不便な名建築に暮らす人々など、いろんな人がいるのはさすが東京という感じ。ひどい食物アレルギーのお子さんがお母さんのお弁当に「カンドーして泣きそうになる」のはいい話。亡くなる直前にワインを飲んで逝った夫との思い出、離婚して新しいことを100個やろうと決めた男性。皆それぞれに食べて生きているんだなあと。自分もがんばらねばと思った。2024/05/08
青木 蓮友
50
これはまさしく名著でしょう。「台所」なんて、いいところに目を付けますよね。こういうセンスが天才なのですよ、本当に素晴らしい。そして濃縮濃厚濃密なる人生を一気に脳内注がれ、心地よい疲れとともに地に足ついた充足感、なんだか安心感というか。タイトルの「それでも」がまた良くってね、何度も頷きながら大切に読みすすめました。やっぱり印象的だったのは取材第一号の続編です。ただね、わたしは癌家系じゃないので(なのに短命)語弊を承知でほんの少し羨ましい気も。その生命が、その時間が台所にまるごと沁みているだろうから。幸あれ。2024/06/23
yumiha
49
台所から暮らしが思いが見えてくる。と著者は台所にまつわる聞き書きを続けて来られたそうな。一番見てみたかった台所は、中銀カプセルタワー(かの黒川紀章が設計)の「ふくい亭」。火気厳禁、洗面所の水だけで料理し、もてなすなんてすごすぎる。一番驚いたのは、突発性間質性肺炎に肝硬変の夫の生き様。重病なのに煙草もワインも止めず、最後の救急車を待つ間までも貫く「旅立つ前の最後の一杯」。なかなかできることではありませぬ。一番共感したのは、ワーキングマザーのはしりで、価値観の違う夫の助けは得られなかったワンオペ育児の話。2023/09/27