出版社内容情報
少子化が進む韓国、中国。少子化と無縁なイスラエル、支援の充実で少子化を防ぐヨーロッパ諸国…。記者たちの徹底ルポで世界の少子化の現状と日本の行く末を考える。
内容説明
合計特殊出生率1.34!5年連続ダウン。“崖っぷち日本”再生のヒントと落とし穴。韓国・中国・フランス・イスラエル・米国・ハンガリー・フィンランド…世界を巡って見えてきた「国の思惑」と「女性たちの本音」
目次
第1章 韓国―世界最低水準の国で起きている若者の「結婚離れ」
第2章 中国―「一人っ子政策」の宿痾に縛られる少子化大国
第3章 フランス―「少子化対策先進国」に息づく権利獲得の文化
第4章 イスラエル―家族重視の価値観がつくる少子化対策先進国
第5章 米国―技術革新と企業の支援で加速する少子化対策の功罪
第6章 ハンガリー―危機感に突き動かされた“本気”の施策と不寛容の表裏一体
第7章 フィンランド―リベラルな国が苦悩する「個人の自由」と「社会全体の利益」のひずみ
終章 少子化の何が問題か―少子化がもたらす未来のシナリオとその対策とは
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうみや
25
毎日新聞記者達が7カ国の少子化事情をレポートするオムニバス形式。各国の状況と事情が分かって日本だけではわからない多角的な視点が得られる。将来への不安、教育費の増大もあるが、結婚・出産が必須ではなくオプション化となった価値観の多様化、一人でも生きていけるほど豊かな社会になったこともある。善いとされていることが少子化の主要因の皮肉。そんな中で出生率が3.0を超えるイスラエルの特異性が際立つ。とにかく子沢山が善だとされている価値観。ほとんどの国では無理だろう。2024/03/10
katoyann
19
世界7か国の出産状況と政策事例を取り上げたルポ。韓国は日本にやや似た社会的な背景がある。基本的には雇用の不安定化と高騰する教育費が未婚化に拍車をかけているという。一方で少子化を克服したかのように見えるイスラエルやハンガリーは、出産・子育て支援が充実しているとはいえ、政権与党が保守的と言える宗教倫理を前面に押し出しているため、女性の個人的な権利保障という観点から見ると政策に疑問符がつく部分もあるという。編集部は、個人の自由を尊重しながら、子どもを産みたい人が育てやすい社会を構築すべきとして結んでいる。2024/03/21
Mc6ρ助
14
『「人口ボーナス」の文脈で取り上げられることも多い日本の高度経済成長期についても、立正大学の吉川洋学長(マクロ経済学)は、「実は年平均9.6%の成長率のうち、労働人口の伸びによる成長は1.3%でした。単純計算で8.3%は労働生産性の向上によるものでした」と分析する。(p260)』夫婦別姓を認めようとしない自公政権の少子化対策が絶対に失敗するとこれを読んだ爺さまは確信してしまった。(ついでに経済政策も。労働生産性が向上しそうな政策が見当たらないと言ってはこの本に書いてあることからも感想からも外れすぎかな)2022/07/26
lily
13
少子高齢化対策が喧伝される日本において、「少子化は本当に悪なのか」という観点を持って世界各国の少子化の現状と課題を取材したルポ。日本と家族観の似た中国・韓国、家族支援策が手厚いフランス、民族的危機意識から出生率の高いイスラエルに、卵子凍結など生殖医療が盛んなアメリカ。様々な国で少子化対策が銘打たれているが、子供を持たないことを是認するチャイルドフリー運動が巻き起こるフィンランドを見るにつけ、経済成長が進み個人主義的価値観が広がる先進国における少子化は最早必然とも言えることがわかる。少し考え方が改まった。2025/02/13
ののまる
10
なんと示唆に富む!! 一人だけ、多様性を否定し、明治以降に富国強兵で意図的に作られただけの「日本の伝統的家族観」をひたすら守れと振りかざす化石的日本人(国家基本問題研究所副理事長、1942年生まれ)がおり、現状をわかっていない浮きまくり感がすごい笑 少子化政策には、こういう「老害」の存在が前提にある。しかしそれは今の政権の姿でもあるか。2023/02/07