出版社内容情報
太平洋戦争から震災と原発事故、コロナ禍まで。
政治家・官僚の組織文化と精神風土に潜む「負の遺伝子」をたどり、危機管理の根本的欠陥を問う!
内容説明
戦争、災害、事故、感染症。その時、現場で何が起きていたのか。徹底的な調査と検証で、日本の組織を蝕む「負の遺伝子」をあぶり出す。危機の時代のゆくえを追う、渾身のドキュメント。
目次
欠陥遺伝子の源流―ミッドウェー海戦、虚構の戦略
1(コロナ禍・露呈した戦略思想の欠落;巨大津波・警鐘抹殺のからくり;原発暴走・被害者の視点からの欠陥分析)
2(いのちの危機・災害多発時代の時々刻々;政治の言語崩壊・時々刻々)
著者等紹介
柳田邦男[ヤナギダクニオ]
1936年生まれ。作家。1979年『ガン回廊の朝』で第1回講談社ノンフィクション賞を受賞。1995(平成7)年『犠牲 わが息子・脳死の11日』とノンフィクション・ジャンル確立への貢献が高く評価され、菊池寛賞受賞。災害・事故・戦争や、生と死、言葉と心の危機、絵本と子どもの人格形成等の問題について積極的に発言している。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
121
半世紀近く「危機管理」に関わる発信を続けてこられた柳田邦男さんの集大成ともいえる一冊。メインは、コロナ対応、東日本大震災と福島原発事故だが、危機管理を放棄した原点が水俣病事件にあることを思い知らされる。危機に際しての政治家の言葉の貧困、官僚の事なかれ主義、企業経営者の無責任、現場に立たずに無罪判決を下す司法などが、ケーススタディを通じて明らかにされ、「組織事故」という社会の構造的な欠陥を浮き彫りにする。具体的で説得力のある説明に納得するも、この隘路から抜け出す光明が見えないもどかしさで暗澹たる思いになる。2022/04/10
サトシ@朝練ファイト
33
政治の言語崩壊・時々刻々の章を読むと為政者により国の内側から壊れていくのが一番恐ろしいと思うが、為政者を選ぶのは国民であると言うことを忘れてはならない。2022/05/14
まゆまゆ
17
新型コロナ感染症対応や東日本大震災といった災害が起こるたびに批判される政府の危機管理対応について語る内容。ドイツのコロナ対応との比較にがっかりしつつ、原発事故対応に打ちひしがれる。今だけ自分だけしか考えない政治家と官僚によって想定外が切り捨てられて想定すらされないことが本質ではないか。2022/08/18
ろべると
12
柳田邦男さんの航空事故などを扱った本は昔よく読んだ。綿密な取材をもとに冷静に真相に迫る内容に強く惹きつけられたものだ。近刊である本書では、前半では主に東日本大震災での原発事故を取り上げ、事前に警鐘が鳴らされていながら握りつぶし、事故発生後も予見不可能と開き直った東電や政府周辺の対応が告発される。後半はその勢いで当時の安倍政権がやり玉に上がり、怒りでヒートアップしているようにも感じる。前半が文藝春秋、後半は毎日新聞連載というのも面白いが、弱者に真摯に向き合おうとする柳田さんの一途な思いは十分に伝わってくる。2022/08/03
Ezo Takachin
6
現在、柳田邦夫氏のような存在感のあるノンフィクションライターはいるだろうか。日本人特有の危機管理の甘さを痛感するばかりである。昨今のコロナ対応での脆弱ぶりにも目を覆うばかりである。ドイツでの対応ぶりの比較されていたが唖然としてしまう。本書最後にある日本政治に対する分析はうなずくばかりである。政治不信と言われてすでに何十年。この先の日本は大丈夫であろうか?2024/04/20
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