出版社内容情報
著者は、政府に任命拒否された日本学術会議の新会員候補の一人。
歴史学の手法で首相官邸側の思惑を解き明かす時評を含む反骨の論評集。
内容説明
なぜ日本学術会議の名簿から6人が除外されたのか?政権が個人を「弾圧」する。その隠された真意とは?日本近現代史の泰斗が歴史学の手法で解き明かす。
目次
第1章 国家に問う―今こそ歴史を見直すべき
第2章 震災の教訓―東日本大震災10年を経て
第3章 「公共の守護者」としての天皇像―天皇制に何を求めるか
第4章 戦争の記憶―歴史は戦争をどう捉えたか
第5章 世界の中の日本―外交の歴史をたどる
第6章 歴史の本棚
著者等紹介
加藤陽子[カトウヨウコ]
1960年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。1989年、東京大学大学院博士課程修了。山梨大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所訪問研究員などを経て現職。専攻は日本近現代史。2010年、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)で小林秀雄賞受賞。『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』(朝日出版社)で紀伊國屋じんぶん大賞2017受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
113
この10年間に毎日新聞に掲載された文章を収録。改めて、立派な人だと尊敬の念を深くする。近代史の専門家として、戦争、世界、国家、天皇などへの確乎とした歴史観の上に、東日本大震災、コロナ騒動など現代社会への鋭い考察がある。自らが渦中の人となった日本学術会議の会員推薦拒否騒動に対しても、加藤先生一人が、その後の連携委員への就任を拒否して自らの矜持を貫いておられるのは、見事としか言いようがない。学生たちに向かって「私には友達がいませんから」とドキッとさせたあとで「一人でも大丈夫。でも一人じゃない」。この人は強い。2021/09/21
パトラッシュ
110
日本政治や外交のあり方、震災対応や天皇制について歴史学者の立場から鋭く切り込む。語っている内容はもっともであり理性として納得できる部分も多いが、立ち位置とする左翼リベラリズムの有効性が疑われている現実を無視しているのではないか。急速なAI発達や中ロの強硬外交、北朝鮮の核にコロナと明日への不安が広がる昨今に、過去半世紀近く正道とされた思想が今後も正しいと信じているのだ。極右やナショナリズムが勃興するのも大衆の愚劣さ故であり、自分が導かねばという左派特有のエリート臭が匂う。トランプ信者が一番嫌うものなのだが。2022/06/26
どんぐり
106
著者は日本学術会議の会員候補として推薦されながら、菅義偉首相に任命されなかった6人の研究者の1人。政府の説明なしの任命許否、また一度下した決定をいかなる理由があっても覆そうとしない態度に対し、その事実と経緯を歴史に刻むために、「実」を取ることはせず、「名」を取ることで自身の矜持を貫いた人である。本書の主題は、真実の歴史を人間が書いたり発したりした「言葉」から探りながら、国家と国民の関係を国民の側から問い返して見つめ直すというもの。平たく言うと、国民としてこの国ことをよく考えろということである。→2022/01/17
けんとまん1007
75
タイトルの「この国のかたちを見つめ直す」。そう、ここから始めることが大切。巷に溢れる、有象無象の情報に影響されず、自分の眼で見て、自分の頭で考えること。さらに、それを、時間軸の中で考えること。今だけを考える風潮が強い(そう作られているようにも思う)からこそ、歴史の視座が必要。何より、透明さがますます欠如しているこの国だからこそ、眼を背けてはいけない。2022/02/22
しゃが
65
あの加藤さんが10年間新聞に連載されたエッセーとコラムを中心に国家と国民・東日本大震災・天皇と天皇制・戦争の記憶・世界と日本の章立てでまとめられている。最後は「歴史の本棚」の書評集がある。それぞれ丹念に紙媒体の記録(最近の政府や行政が無視する)を検証しながら、新たな視点を提示。それは単にエッセーやコラムの範囲を越えた深く、重いものがあった。それらの公文書や著作を読んでみたくなった。もちろん「歴史の本棚」の本も手にしようと思った。まずは井上ひさし著の『初日への手紙』から。無知を猛省し、多様な刺激を受けた本。2021/11/12