出版社内容情報
イノベーション不足、研究力の低下……「科学技術立国ニッポン」はなぜ幻と消えたのか? 国力低下の真因を探る渾身のノンフィクション。
内容説明
「平成の国力衰退」をもたらした科学政策「大改悪」の驚くべき真実をあばく!政治、経営、そして科学の現場からの報告。
目次
第1章 企業の「失われた三〇年」(「産みの親」東芝はなぜ敗北したか;グーグルになれなかったNEC ほか)
第2章 「選択と集中」でゆがむ大学(内閣府主導プロジェクトで「やらせ公募」;膨張する内閣府の集中投資 ほか)
第3章 「改革病」の源流を探る(「科学技術族」長老の嘆き;「選択と集中」路線の始まり ほか)
第4章 海外の潮流(中国の巨大電波望遠鏡「天眼」;「破格の待遇」で研究者引き抜き ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
169
毎日新聞科学面の連載をまとめた論説。昨今の学術論文数減少を根拠に科学技術力弱体を指摘し、その要因が国の科学技術政策の失策とし、克服するため、多様で自由を認めた研究評価を用いた国政の是正が本書概要。本当に日本の科学技術力の低下しているのだろうか。ノーベル賞受賞者の研究が数十年前だとの指摘もあるが、彼らを支えた研究者の存在や毎年の候補者の研究には最近の成果もある気がする。また人口体系や文化の違いから必ずしも提案する米国や中国の科学技術政策が良いとも言えない印象。ただ、歴史的な官制大学の在り方の是正は必要かも。2019/12/13
trazom
40
「幻の科学技術立国」という新聞連載を再構成した一冊だから仕方ないが、そもそも「科学とは何か」「経済としての科学なのか」という本質を問うことなく、日本企業の課題、大学の問題、中国の躍進など表層的な事象を紹介するだけの記事に奥行きはない。「かつての自然科学に拘っているから日本企業がダメになった」「GAFAやアリババにノーベル賞受賞者はいない」という産業界の小林喜光さんや「自主・自立を目指した国立大法人化なのに、却って国の支配を強められてしまった」という長尾総長などのインタビューの言葉の中にこそ、真実がある。2019/12/17
HMax
39
科学技術立国を再生するため、次の総理には科学技術庁の再興をお願いします。「科学嫌いが日本を滅ぼす」「科学立国の危機」「科学者が消える」を読んで、止めがこの「誰が科学を殺すのか」。こういう状況では、高校物理の履修者が40年前は9割→今3割というのも当然。飛び級し千葉大学工学部に16歳で入り博士になりポスドクへ、その月収が額面22万円。なんとか大学でポストをみつけようと頑張ったら、セクハラ・パワハラ・安月給のブラック研究室。気が滅入るので、この関係の本は当分休憩とします。頑張ろうニッポン。2020/08/29
みこ
34
日本の科学研究の裏で何が起こっているのか?いや、何が為されていないのかを綴った一冊である。日本の国家予算は本当に回すべきところに回っているのか改めて疑問を感じる。そして、研究の方向性を示す指導者が科学素人だと結局、お金があってもそれは無駄に費やされてしまう。ポスドクの現状は「バッタを倒しにアフリカへ」である程度予習済みのつもりだったが、みんながみんな、彼のように前向きで周りの人に恵まれるわけではない。人は夢を食って生きていくことはできない。2021/01/03
フム
33
「誰が科学を殺すのか」とは挑発的なタイトルに思えるかもしれないが、日本の科学技術の衰退ぶりは、その分野に詳しくない私にさえ、明らかな現実として認識されている。「殺すのか」ではなく「誰が科学を殺したのか」知りたい気持ちで手にとった。図書館本。バブル崩壊、さらにリーマンショックと日本経済の落ち込みと同時に企業の開発力、大学の研究力ともに大きく低下してしていったことがわかる。大きく2章で取り上げているのが大学の研究の場での「選択と集中」、研究資金を成果が見込める分野に重点的に配分する、効率化・成果主義だ。2020/11/28
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