出版社内容情報
戦後70年、今こそ偽善と欺瞞とエリート主義の「リベラル」に別れを!リベラリズム論第一人者の東大教授によるリベラル再定義の書。
内容説明
偽善と欺瞞とエリート主義の「リベラル」は、どうぞ嫌いになってください!戦後70年。第一人者によるリベラル再定義の書。
目次
第1部 リベラルの危機(信用失墜;「自由主義」にあらず;啓蒙と寛容;カントの啓蒙;寛容の二面 ほか)
第2部 正義の行方(文魂法才;真理との出会い;相対主義の克服;正義と善;正義論への準備 ほか)
著者等紹介
井上達夫[イノウエタツオ]
1954年、大阪市生まれ。77年、東京大学法学部私法コース卒業。東京大学法学部・教養学部助手、千葉大学法経学部助教授、ハーバード大学哲学科客員研究員、東京大学法学部助教授を経て、95年より東京大学大学院法学政治学研究科教授。法哲学専攻。86年、『共生の作法―会話としての正義』で、(86年度)サントリー学芸賞(思想・歴史部門)受賞。2005年、『法という企て』で、第17回(04年度)和辻哲郎文化賞(学術部門)受賞。09~13年、日本法哲学会理事長。05~14年、日本学術会議会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
37
基本軸は他者に対するフェアネス。もし自分だったらの反転可能性。頭に入れておくべきは多種多様な国家体系に通底すべき「正義概念」とそれに伴う法の「正統性」の認識だ。天皇制や9条に関する見解はいわば各論で、総論さえ押さえておけば導き出される答えが人によって多少ずれても間違いにはならない。何でも即断する政府は一見頼もしいが実は危険でもある。悪法も法。十分に迷った後では決断を躊躇わないという形が正解なわけで、熟慮と議論の意味をもっと考えないと。官僚や政治家も我々と同じく愚かなのだ。法とは何かという法哲学を学びたい。2019/08/22
Y2K☮
36
真のリベラルは真の保守と同様、もはや右でも左でもない。どちらの欺瞞も許さない。たとえばイラク戦争に費やした予算で貧困死する人々をどれだけ救えたかとアメリカを批判し、同時にそういう米軍の庇護に甘え、沖縄などに負担を押し付けて平和を謳歌する日本の「タダ乗り」も叩く。良心的拒否権を認める徴兵制という発想は一理ある。アジア女性基金による慰安婦への謝罪と補償やドイツの戦争責任に関する実態も勉強になった。大事なのはフェアネス。己が相手の立場でも受け入れられるかという反転可能性。そして独善性に陥らず、批判に学ぶ寛容さ。2018/02/07
tetsu
27
★3 「リベラリズムの哲学的基礎を解明し、その観点から法と政治の問題を考察」してきた著者による、一般読者向けの本。毎日新聞出版社の志摩和生のインタビューに答える形式。 あとがきで「明晰性を過度に犠牲にせず平易に語ることは、言うは易く行うは難し」というように、なかなか難解でした。同様のテーマをもっとわかり易く書いているのが橘玲でこちらは読みやすい。 ただ、井上達夫の「世界正義論」は読んでみたい。 2021/04/01
しゃん
27
The Economist誌でリベラリズムの特集記事があったことをきっかけに、本書を読んでみた。途中で理解できなくなったところがあったけども、インタヴュー形式で語られているので、結構分かりやすかった。理論のための理論ではなく、絶えず現実の政治経済的問題を克服するための理論という観点で説明されていたのがよかった。サンデル教授の考え方の変遷の解説も興味深かった。2018/10/11
takeapple
26
リベラリズムにとって大事な概念は、自由ではなく、寛容だということ。 集団的自衛権は違憲であることは論を待たないが、現行の日本国憲法では、個別的自衛権を認めることも違憲であり、そのような解釈改憲をやってきた流れが、安倍政権の支離滅裂な状況を作り出しているということだ。 さらに例外なき徴兵制を敷いて軽武装にするが、それは憲法には載せない、9条削除論が井上さんの主張である。 立憲主義の大切さがよくわかる一冊。2015/08/21