内容説明
時間をかけて患者と向き合う「スロー・メディスン」。その実践で知られる米ラグナ・ホンダ病院の元勤務医が、患者との心温まる交流を描いた全米ベストセラー!
目次
小さなお世話
「転移」という愛
ディー・アンド・ティーの来訪
テリー・ベッカーの奇跡
スロー・メディスン
ドクター・ダイエット、ドクター・クワイエット、ドクター・メリーマン
グレン・ミラーとブラムウェルさん
カナの婚宴
私のお気に入り
素晴らしい国
命への帰還
神様のホテル
著者等紹介
スウィート,ビクトリア[スウィート,ビクトリア] [Sweet,Victoria]
医師。サンフランシスコのラグナホンダ病院に20年以上にわたり勤務。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部准教授。歴史と社会医学で博士号取得。『神様のホテル(God’s Hotel)』で、2012年カリフォルニア州のノンフィクション大賞受賞。2013年、優れたノンフィクションに与えられるガルブレイス賞候補作品にノミネートされる
田内志文[タウチシモン]
1974年埼玉県生まれ。翻訳家、文筆家。フリーライターを経て渡英、イースト・アングリア大学大学院にて翻訳を専攻
大美賀馨[オオミカカオル]
1986年栃木県生まれ。2009年、東京農工大学工学部卒業。自動車分野での実務翻訳を経験後、書籍翻訳の世界へ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
28
自然治癒力に、日々の観察力・・・。魔法はない!『ラグナ・ホンダの原則』は、理想ではなく原理。ラテン語の語源が、現代医療に問いかける・・・。故に、カーティス医師の「届かない靴」が印象的。一方、数字で語る現代。単純に批判するのも、妥当性と論理性に欠ける。著者の聖地巡礼の旅も気持ちはわかるが、どこか現実逃避の印象も否めない。LEED認証病院でもあり、今後の医療のあり方に様々な角度から挑み続けて欲しい!2014/06/04
yokmin
9
患者との対話を重視し、表情を読み取り、時間をかけて診断を行ったうえで治療に取り掛かる「スロー医療」を実践し、効率的治療を排するこの女性医師に共感を覚えた。患者が治癒していく過程の描写も興味深い。原題の副題は「医療の真髄を求める巡礼」(・・Pilgrimage to the Heart of Medicine)とでも訳すべきか。2014/03/22
ケニオミ
8
米国カリフォルニアのラグナ・ホンダは、貧民院と呼ばれるほど貧しい人々への救済を目的とする病院であった。しかし、「効率」を優先とする市当局から「非効率」との烙印を押され、次から次への「改善」命令が下り、患者へのサービスは悪化を辿るのであった。20年間この病院に勤めた女医から見たラグナ・ホンダの凋落と患者との興味ある交流を描いた本書は、効率を追求すると何を失うのかを如実に表しており、とても興味深い一冊です。ただただ残念なのは、この女医が病院の凋落ぶりをただ手をこまねいて見ているだけだということです。2014/02/25
プチライス
7
アメリカ最後の救貧院とされるラグナ・ホンダ病院で働く女性医師による書。末期ガンの患者に「なにか私にできることはない?」と訊ね、その答えに打ちのめされたという。「彼女が望んだのは、安楽死でも奇跡の治療法でもなければ、強力な鎮痛剤でもセカンドオピニオンでもない(略)彼女にとって重要なのは、些細で日常的なものごとだった」「新しいめがねだとか、食事を変えるといった、簡単なことでいい。患者が必要としているのは、実際そんなことばかりなのだ」。効率史上主義の病院で「患者のケアの秘訣とは、非効率であること」の皮肉と非情。2014/08/05
yutaka1947
7
この本の舞台であるラグナ・ホンダ病院は「救貧院」と呼ばれ、おもに回復の兆しのない貧しい病人が運び込まれてくる施設だ。彼らの出会いの中に、現代の私たちが失ってしまった「人間の絆」を見ることができる。費用対効果を追求していくなかで、しだいに「心」を失ってゆく現代医療──それに抗うように、患者の「心」を大切にする医師や看護師たちの姿に感動した。現代の医療の在り方について本質的な疑問を投げかけており、医療関係者だけではなく、一般の方々にもぜひ読んでもらいたい本だ。2014/01/08