内容説明
日本陸軍第二鉄道監部鉄道第九連隊。無謀な下命により、泰緬鉄道の苛烈な建設工事に俘虜を使役せざるを得なかった小隊長らの、非業の運命。丹念な取材で実像を明らかにする、出色のノンフィクション。
目次
序章 有料老人ホーム
第1章 シンガポール陥落
第2章 鉄道建設命令
第3章 罪
第4章 死刑旋風
第5章 無念の俘虜収容所長
第6章 鉄道小隊長の刑死
第7章 「遺墨」
第8章 慰霊碑
終章 遥かな空
著者等紹介
小林弘忠[コバヤシヒロタダ]
1937年東京生まれ。60年早稲田大学教育学部卒、毎日新聞社に入社。社会部、情報調査部長、メディア編成本部長などを経て、92年退職後ノンフィクション中心に執筆活動を続ける。『逃亡「油山事件」戦犯告白録』(毎日新聞社)で第54回日本エッセイスト・クラブ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
9
1942年タイからビルマへ兵員・物資の補給ルート確保の為、泰緬鉄道建設に着手。工期短縮による無理な突貫工事を敢行、大勢の俘虜も動員し、灼熱のジャングルを切り開き巨岩を砕きスコールの中工事を進めるも、栄養不足、悪性マラリア、コレラ等で犠牲者続出。俘虜の死者は12千人、現地労働者の死者は32千人といわれる。戦後、俘虜虐待のBC級戦犯となった軍関係者の悲哀が綴られる。しかし多くの犠牲を出して開通させた泰緬鉄道がその後の戦局にどう影響したかは記載がない、これでは関係殉難者に対し失礼ではなかろうか、些か残念な本。 2016/06/13
ユウヤ
3
タイへの旅が決まった日に購入した。カンチャナブリは観光地化していたが、この本のおかげで当時の人びとを想いながら旅をすすめることができた。戦争には勝者も敗者もない。誰もがとてつもない傷を負う。靖国神社に泰緬鉄道を走った蒸気機関車C56が保存されているとの記述があった。彼も『遥かな空』を見つめているのだろうか。2014/01/11
tecchan
0
映画「戦場にかける橋」で有名な泰緬鉄道。タイとミャンマーを結ぶ415キロのジャングルを戦時中、僅か一年有余で完成。日本兵、捕虜、現地労働者約17万人を動員、過酷な労働と食糧不足により数万人が亡くなったと言われる。 この作品は、その過酷な現場の実態と戦犯にとわれた人々の悲劇を描く。戦争では、理不尽な命令でも従わざるを得ない現実と、その責任は結局最前線の兵が負わざるを得ない矛盾が露わになる。2023/07/06
-
- 和書
- 江戸のおんな 二見文庫