内容説明
隔離収容された両親の苛酷な人生。国の政策や社会の偏見のなかで自らを隠して生きた苦難の日々。ハンセン病患者の両親のもとに生まれた著者が、人間の尊厳を取り戻す闘いを綴る記念碑的な作品。
目次
第1章 親子の別れ
第2章 独り立ち
第3章 准看護学院
第4章 もう一人の私
第5章 結婚生活
第6章 ささやかな幸福
第7章 苦難の日々
第8章 母とともに
第9章 裁判、そして新たな出会い
第10章 私の使命
著者等紹介
宮里良子[ミヤサトリョウコ]
1944年、九州に生まれる。1962年3月、准看護学院卒業後に看護師となる。2001年2月、ハンセン病国賠訴訟西日本訴訟の遺族原告として熊本地裁に提訴(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃんみー
45
「生まれてはならない子」ってどういうことだろう?私はこれを障害を持って生まれた、と思ってました。著者、宮里良子さんはハンセン病の親のもとに生まれその殆どの人生において自分を偽って生きてきたんですね。どれほど傷ついたことだろうか?と思います。らい予防法が廃止されたのは平成になってからなんですね。知りませんでした。私にとってはつい最近のこと。生まれるべく子どもがこの病気の風評被害で生まれてこられずホルマリン漬けにされてるくだりは読んでいて辛かったです。ドリアン助川さんの本を読んでからハンセン病が気になってます2016/10/07
美登利
38
タイトルを見たときにどういう理由で?と思い手に取った本。著者はハンセン病患者の娘として生まれ、それを周りには隠しながらも、隔離された両親に会いに幼い頃から遠い道のりをゆく。ハンセン病の差別は実際には見聞きしてませんが、助川さんの「あん」を読んだことで気になっていました。彼女はご両親ともハンセン病で本来ならば堕胎させられてこの世には居なかったかもしれないと言う思いと、その家族として差別を受けた様々な恐怖を語っています。裁判のことは巻末の弁護士や被害者の会の代表の方々の文章がとても分かりやすかったです。2015/03/04
のの
11
自分もハンセン病問題について研究していた身でありながら、これまで患者家族に対する視点が抜け落ちていたことを、この本を読んで気付かされた。どうしても本人に視点を置いてしまっていたので、家族がハンセン病になったからといって離縁するなんて酷い、家族の絆なんて脆いものだと思ってしまっていたけれど、この思いは家族の方にさらなる苦しみを押しつけていたんだろうなと…。本人が療養所に隔離されたのも、家族が絶縁しなくてはならなかったのも、ひいては国の政策が作り上げた社会のせいだった訳で。日本国憲法ができた後もそれは続き。2012/12/26
tecchan
1
太平洋戦争末期、子を産むことを厳禁されたハンセン病療養所を7カ月の身重で脱走した両親から生まれた著者の壮絶な記録。再度療養所に隔離された両親とは生き別れ状態になりながらも、常に前向きに、看護師、妻、母として、偏見と差別と闘いながら生き抜いてきた著者。 親子の愛とは、差別とは、生きることとはなど、深く考えさせられる。2016/03/26
ちゃいタイム
0
ハンセン病の親と引き離されて育った主人公の目を通して差別と偏見が浮き彫りになる。誤った国策によって人生を奪われてしまった人々に、今もなお差別や偏見はなくなっていない。新聞でもハンセン氏病の裁判の記事が載るけれど、何を持ってすれば埋め合せることができるというのか。2016/04/02