内容説明
二十世紀初頭のウィーンで「リストが墓からよみがえった」と称えられた天才ピアニスト、レオ・シロタ。世界に名を馳せた巨匠がなぜ、一九三〇年代から終戦という激動期に日本で活躍したのか。膨大な一次史料をもとに、誰も書かなかった戦時下日本の真相をあぶり出す。
目次
序章 嵐のなかのトロヴァトーレ
第1章 深い霧のなかから(一八八五~一九一三)
第2章 たそがれのウィーン(一九一四~一九二七)
第3章 来日(一九二八~一九二九)
第4章 教師としてのレオ・シロタ(一九三〇~一九三二)
第5章 ユダヤ人問題(一九三三~一九三八)
第6章 ピアニストとして
第7章 嵐(一九三九~一九四六)
終章 幻想の花火(一九四七~一九六五)
著者等紹介
山本尚志[ヤマモトタカシ]
1964年生まれ。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。文学修士。歴史研究とともに、音楽雑誌にピアノ演奏会の批評、日本人ピアニストと日本で活躍した外国人ピアニストの伝記などを執筆
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感想・レビュー
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門哉 彗遙
3
もしかしたら、フジコ・ヘミングとベアテ・シロタさんは出会っていたのではないかと思ったので、「日本を愛したユダヤ人ピアニスト〜レオ・シロタ」を読んだ。 ベアテはフジコの8つ上で、ほとんど同じ時期に東京に居た。戦争末期にも同じ軽井沢に幽閉されていた(ベアテはその時はアメリカにいたけどベアテの父は世界的に有名なピアニスト(ということをこの本を読んで初めて知った。キエフでは神童で8歳でピアノリサイタル、9歳で音楽学校に入学、10歳で演奏旅行!しかし20歳の時のピアノコンクールにはには入賞できず。2024/07/20
くまこ
3
第1次世界大戦から世界恐慌にかけてのヨーロッパの混乱や、反ユダヤ主義の解説がよかった。また、1930年代から敗戦にいたるまでの日本の様子が、音楽家・教育者シロタの生活を通して語られ、貴重な歴史の資料と言える。東京音楽学校でのピアノレッスン風景、1944〜45年の軽井沢軟禁時代、GHQ職員として来日した娘ベアテ(日本国憲法草案に携わった一人)との再開の場面、シロタが去って以降の日本音楽教育の混乱などが、特に心に残った。2015/06/29