内容説明
住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける北川春子39歳。母屋に越してきた夫を亡くしたばかりの63歳、青木ゆかり。裏手の家に暮らす、今どきの新婚25歳、遠藤沙希。偶然の出会いから微妙な距離感のご近所付き合いが始まった。「わかりあえなさ」を越えて得られる豊かな関係を描き出した珠玉の一作。
著者等紹介
柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年大阪生まれ。2000年に『きょうのできごと』を刊行(04年に映画化)。07年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、10年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(18年に映画化)、14年に『春の庭』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イシカミハサミ
16
最近よくあるといえばよくある、 多様性と「普通」の対立、というか共存。 これがさすがの柴崎さんの文体で綴られる。 黄色い家。 ファストファッション。 1人暮らし。 車。 生活の中の個性から、 さまざまなものを暗示させる。 暗示させられているものを、 暗示していると認識してしまうこと自体が、 世の中の「普通」に毒されている証拠かもしれない。2024/02/29
miu
11
わたしはつくづく市井の人のなんてことない日常をうまく描く作家が好きだ。柴崎友香もその一人で今作「待ち遠しい」ももちろん最高だった。一人で賃貸の離れに住む春子と大家で母屋に住むゆかり。ゆかりの甥の嫁沙希。ご近所付き合いは面倒くさくもありがたいもの。そして次から次へと気付きを得るもの。あしたからちょっと目に映るものが変わるかも。ご近所付き合いはしないと思うが、人ともう少し関わることもいいのでは、と思えた。2023/03/05
まなみ
10
ご近所付き合いからの人間関係のお話。とても近くて心地よい関係というよくある話とは違い、ほどよい緊張感のある関係性がこれまで読んだ小説とは違っていて良かった。お互いに話をしてきつく聞こえるシーンは少なくないのだけど、春子が自分の思うことについて話をしたり、相手の話に共感や否定をするでもない感じが私には素敵に見えた。「待ち遠しい」これは人生のテーマかもしれない。2023/08/14
ヨシ
10
離れの一軒家を借りてシングル生活を楽しむ春子39歳。母屋に越してきた、亡夫を忘れられない63歳ゆかり。ゆかりの甥の妻で裏手の家に住む沙希25歳。価値観が全く違う三人がご近所になったことで知り合い、自分を見つめ直し、自分の生き方に気付くまでのお話。「わたし以外のほかの誰かが決めることじゃないんです」という言葉が心に残る反面、全てを忘れるほど沙希がイヤすぎた。こんなに嫌いな登場人物は初めてかもしれない。2023/06/04
akaichihiro
6
3人の女性の物語。人って仲良しこよしじゃないのよ。モヤモヤした気持ちを抱えて分かり合えないけと何となく付き合っていくしかないのよ。日常はそれの積み重ね。関西弁ってこんな感じだっけと言うのは気になった。2024/05/01