出版社内容情報
青年は鬼(グイ)となってこの世に舞い戻った。三毒を討伐するために――。舞台は毛沢東率いる中国共産党が全権を握る中国。拾い子ながら愛情豊かに育てられた?雨龍を待ち受ける過酷な運命と成長を描いた、感動のエンターテインメント長編。
【目次】
内容説明
養父母を失ったうえ、姉すらも守ることができず、悔悟と激しい怒りに苛まれる青年・〓雨龍。とうとう、その元凶である村の青年幹部・田冲に復讐し、自らも殺人の咎で銃殺刑に処される…。ところが、ようやくたどり着いた冥土で、ひょんなことから功績が認められ、ある条件と引き換えに、再び“この世”に舞い戻ることを許される。その条件とは、人間界に逃げ出した三毒の討伐だった―。
著者等紹介
東山彰良[ヒガシヤマアキラ]
1968年、台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。2003年、「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビュー。09年『路傍』で大藪春彦賞を受賞。15年『流』で直木賞を受賞。16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。17~18年『僕が殺した人と僕を殺した人』で、織田作之助賞、読売文学賞、渡辺淳一文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
153
先日の上巻に続いて、漸く下巻が読めました。上下巻、600頁強、完読です。本書は、著者の新境地でしょうか、三毒地獄変歴史ダークファンタジー、著者は楽しんで書いていると思いますが、読者ウケは、あまりしないかも知れません。日比谷図書館では、上下巻とも新刊コーナーに放置されていました(笑) https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-732.html2025/08/20
Sam
46
三毒とは仏教における根本的な三つの煩悩である貪・瞋・癡(とん・じん・ち)を指す(今回初めて知った)。これを題材に採ったのが本作で、著者しか描けないような独創的な作品に仕上がっている。二度生き返る(?)主人公はもちろん個性溢れる登場人物たちも本書の魅力。登場人物たちがどうしようもなく惹かれ合う場面の描写も相変わらず素晴らしい。激動の毛沢東時代が舞台の割にはドラマチックなストーリーではないような気もするけど、所詮人間は三毒を克服することなどできない、共に生きるしかないのだというテーマは描き切ったと思う。2025/08/17
もえ
36
姉の恋人で共産党幹部の田冲を怒りにまかせて殺し、18歳で処刑された佟雨龍は地獄に落ちる。地獄で田冲の体を借りた三毒の瞑蛇が人間界に逃げ出し、雨龍は鬼(ぐい)となって追いかける。物語の荒唐無稽さは下巻で更に加速するが、鬼となった雨龍を応援する和尚や李平や義和犬皮蛋の子である妹子が魅力的で、三毒狩りの世界にどっぷり浸かってしまった。連載を終えた作者の東山彰良氏の寄稿によるとこの物語で描きたかったのは「諦めを悟るための冒険」であるという。諦めきれないことばかりの人生だけど、諦めることで見えてくる世界もあるのだ。2025/08/10
チャオ
3
新聞連載中に読みました。次の場面が予想を超えて切り替わり面白かったです。2025/08/18
小説好きな施設長
3
冗談混じりでも著者が本作で世界に打って出るという類の発言をしていたが、あながち冗談でもない気もする。というのも、残念ながら日本では本作は売り上げの面では正当な評価は得られないと思うし、リーダビリティの面ではあえて時代と逆行させたのかと訝しがるほど低い、がそれとは対照的に成長物語としての筋道はとことんまっすぐで最後までブレないせいでとことん読み切ってやろうと思わせてくれた。本作では著者の作品では珍しく著者の顔があまり浮かばなかったが全編通して「さぁこの自信作、読み切ってみせろ」と言われているような気がした。2025/07/30