出版社内容情報
90歳まで寿命が約束される不思議な機械「Timer」を装着する80代の夫婦が辿り着いた、人生究極の問いの答えとは?“世界の構造”について思索執筆し続ける著者の書き下ろし最新刊!
内容説明
「どんなにかなしいことがあっても、本当にかなしむ必要はない。この世界に悲劇なんてものは存在しないんだから。」89歳までの健康長寿を保証する夢の装置Timerを開発し、失踪したサカモト博士が残したメッセージにはどんな意味があったのか?装着したTimerの消滅日=死を目前に、カヤコは突然、「博士を捜し出し、Timerの秘密が知りたい」と言い出した。その時限設定を解除した者は不老不死になるという噂もある。彼女の真意は不明だが、僕は同行を決めた。年老いて夫婦二人きりになった今、カヤコの死は、僕の死だった。健康長寿を保証する世紀の発明“Timer”。なぜ開発者は消えたのか?装着したTimerの声に導かれ、余命わずかの老夫婦は、禁断の地へ向かう。“死”の果てを描いた異次元の衝撃。人類究極の問いを突破する白石文学の新たな代表作誕生!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
144
白石 一文は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、ショートショート連作集かと思いきや、近未来Timerクロニクルの中篇でした。人生百年時代に、89歳までの健康長寿を保証する世紀の発明"Timer"は、微妙な感じです。テーマは興味深いので、中篇ではなく長篇で書いて欲しかった。 https://mainichibooks.com/books/novel-critic/timer.html2024/06/03
かんらんしゃ🎡
41
89歳まで健康寿命が保証され、そしてtimerが発動して死亡する。これは安楽死の一つか新たな姥捨て山というべきか。でもまあ平均寿命より長いんなら御の字だ。何より死ぬまで介護要らずってのに惹かれる。SFミステリーではあるが、人・夢・死など作者の考えが哲学的に描かれ、新しい視点や発見も多い。しかし理解のはるか上を行く精神世界の本であったなあ。2024/06/24
アイシャ
35
装着することにより89歳までの健康寿命が保障されるTimer 全人口のうち三分の一がこの装置を装着している世の中。82歳の和正は未装着者だが、装着者の妻89歳の伽耶子の命は限られている。妻を失うことは自分の人生の終わりでもあると考える和正は、「取外し屋」を探そうとする妻と行動を共にしだす。内容はSFだが、生と死を考えさせられる哲学的な思考を求められる内容だ。Timerを装着する理由は人それぞれで、伽耶子の場合は最初の結婚でできた子供が人の介助が必要だったためなのだ。自分だったら装着したいだろうか?2024/08/31
rosetta
32
★★☆☆☆高次元からのエネルギーを無尽蔵に取り出せるようになってあらゆる環境問題が解決された未来。人類の半分程は希望して体内にtimerという装置を埋め込むことで89歳まで肉体的にも知能的にも健康寿命を保証される。そのおかげで老人医療費、介護にかかる費用が激減し、その分豊かに暮らせるようになる。但しtimerを装着したものは90歳を迎えることなく必ず死ぬ。設定は面白そうなのに繰り広げられる思索が不可知論や五分前仮説の焼き直しでしかなく徹底的に陳腐。世に出すべきではなかった失敗作2024/09/01
えりまき
18
2024(188)89歳までの健康長寿を約束する夢の装置Timer。生きる期限を自分で選択するのは疑問。「死というものはつくづく、『本当に親しい者の死」と「自分自身の死」の場合にのみ意味を持つのだ」。「この世界は、あなた自身がすべてを作り出したものなのだ。」 2024/07/09