出版社内容情報
戦死した天才駒師がのこした〈幻の駒〉はどこへ? 将棋の駒に命をかけた若者・玄火が遺した傑作〈無月〉を追う青年の旅。心震える希望と再生の物語。
内容説明
失われた駒を求めて、東京からシンガポール、マレーシア、アメリカへ―。旅の終わりに竜介がたどり着いた真実とは?戦死した駒師が遺した傑作はどこへ?棋士の夢破れた青年が、再起をかけてその行方を追う!幻の将棋駒をめぐる希望と再生の物語。
著者等紹介
松浦寿輝[マツウラヒサキ]
1954年生まれ。作家、詩人、批評家、仏文学者。東京大学名誉教授。1988年、詩集『冬の本』で高見順賞、1995年、評論『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞、96年、評論『折口信夫論』で三島由紀夫賞、2000年、『花腐し』で芥川賞、04年、『半島』で読売文学賞、17年、『名誉と恍惚』で谷崎潤一郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シャコタンブルー
66
26歳の年齢制限までに4段になれずに奨励会を退会した竜介。将棋しか知らない人生、将棋だけが生きる目標だったのでその挫折感は半端ないものだろう。キッパリと将棋と縁を切ったはずだが大叔父が駒師だった事を知り、幻の将棋駒「無月」を追う旅に出る。それは夜空に浮かぶ名月を探し追い続けるような旅であるが、いつも暗雲が立ち込めて月が隠れてしまう旅でもあった。「無月」は本当に現存するのか。どんな書体だろう。駒に人生をかけた大叔父の姿が旅を通しておぼろ月から次第に中秋の名月のように鮮やかに現れてくる展開が鮮やかだった。2022/06/05
Sam
52
松浦寿輝といえば映画評論をはじめとした難解な評論を書く人と思ってたので小説家になってたことに驚く。しかも芥川賞作家と知ってもう一度びっくり。そして将棋がテーマの作品と知りこれはもう読むしかない。読み終えて、新聞連載小説であるがゆえの冗長さを多少感じつつもなかなかよくできた感動的な作品だと思った。どこかで四方田犬彦が「人が映画に求めるものは異国情緒とノスタルジー」という意味のことを言っていたが、主人公の挫折と再生にこの2つの要素を絡めた本作品はある意味映画的な作品であるように思える。2022/06/15
kanki
21
将棋の駒を巡り、世界を、人生を、過去を、旅する。自分探しなのかな。よかった2022/06/21
もえ
18
‘20年12月4日〜‘21年11月16日に毎日新聞での連載を読んだが、あまりに良かったので最後の12話を切り抜いて取ってある。プロ棋士を目指すも挫折した小磯竜介が、戦争で亡くなった大叔父が作ったという幻の駒を求めて、様々な人々に出会い自身も成長していく物語である。作者の松浦寿輝さんが連載後に語られていたが「青年がじっくりと人の話に耳を傾けるという行為によって人生を掴み直してゆく」過程に、連載中もわくわく感が止まらなかった。特に安井さんとブルックリンのチャンさんとの出会いは忘れ難い。読後の余韻も心地良い。2022/05/07
Mzo
14
将棋の駒に関する物語。職人が丹精込めて作り上げた芸術作品としての側面と、人々に楽しんでもらうための嗜好品としての側面。両方を併せ持つ駒の特性から、多くの人の物語を紡ぎあげている。こういうよい駒と盤で、一度指してみたくなりました。ヘボ将棋ですが。2022/04/18