内容説明
日露戦争前夜、紀州・熊野に帰ってきたひとりの男―ドクトル槇。新しい思想、動き出すまち、秘められた愛…。激動の明治末、自由を求める人びとの闘いがいま始まる。
著者等紹介
辻原登[ツジハラノボル]
1945年、和歌山県生まれ。90年「村の名前」で芥川賞、99年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、05年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、06年『花はさくら木』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆずこまめ
4
日露戦争、山林地主、洋行帰り、結核、美男美女・・・道具立てが派手でいいです。千春のモデルは文化学院の創設者、西村伊作でしょうか。脇役までいちいち個性的だし、ドクトル槙が優しくて男らしくて素敵。千春も成長してきたし、下巻が楽しみです。2012/01/14
ぴぴ
2
ドクトル槇のモデルの方がいるんですね。その方の行く末を知ってしまいました。。同じ結末になるのかわかりませんが下巻いきます!2013/06/13
すもも
2
個性光る人物が多く、救われない事が多々描いてある中に、心優しきドクトル槇や女親分の粋な計らいなどがちょいちょい描かれてて、読んでいてとても小気味好い。2010/01/23
乱読999+α
1
上下巻読後の感想 日露戦争前後の日本の世情(社会主義の興隆、弾圧、反戦運動等)その悲惨な戦争の状況、そして和歌山県の架空の町(森宮)の「毒取る」と呼ばれる医師槇隆光と彼を取り巻く姪、甥、友人達 元領主の子孫等々が起こす出来事。メインとなるのは彼と人妻との切ないロマンス。読み応えのある壮大な物語。新聞連載の小説なので平易な文章で読みやすく、読者を飽きさせない力強い筆力で楽しく読める。「毒取る」槇をはじめ、登場人物も個性的で魅力溢れている。 下巻に続く2015/06/13
よっちゃん
1
ところでこれはモデル小説か。歴史小説といえないことはないほど時代背景は詳細である。読んでいてこれって本当のことかしら?と首をひねる箇所がいくつもあった。それでいて違和感を感じない。 舞台は紀州・森宮とあるが新宮でないはずがない。いや、新宮のはずはない。 嘘と真をあや織りにした絢爛の虚構空間である。しかしそこには事実に裏付けられた日本の縮図があった。おそらくだから違和感がないのだ。この虚構の世界を生きる人々を描いて、人間が前進していく真実とその人間のなす最大の愚行・戦争の真実を語った大浪漫なのだ。 2010/05/24