出版社内容情報
ペネロピ・フィッツジェラルド[ペネロピフィッツジェラルド]
著・文・その他
山本やよい[ヤマモトヤヨイ]
翻訳
内容説明
1959年英国。フローレンスには夢があった。それはこの海辺の町に本屋を開くこと。しかし時代はまだ事業を始めようとする女性に優しくなく、住人や町の権力者からは反対の声が。それでも本への情熱を胸に、フローレンスはついに“オールド・ハウス書店”を開店させる―。人と本との、心揺さぶる物語。
著者等紹介
フィッツジェラルド,ペネロピ[フィッツジェラルド,ペネロピ] [Fitzgerald,Penelope]
英国文学界の代表的作家。9作ある長編小説のうち、“The Bookshop”をはじめとする3作が権威あるブッカー賞にノミネートされ、『テムズ河の人々』(晶文社刊)で1979年に受賞を果たした。その他にも受賞歴多数。執筆を始めたのは60歳近くになってからで、それまではソマービル大学を卒業したあとBBCで文学誌の編集をし、多くの学校で演劇の教鞭を執っていた。2000年4月に83歳でこの世を去る
山本やよい[ヤマモトヤヨイ]
同志社大学文学部英文科卒。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
133
読み終わってから最初にあった解説を再び読んでみた。読者が戸惑わないように最初にもってきた編集者の気遣いだったのかもしれない。人生の一面を観察し、こういう推移を書き上げるのは、女性ならではという気がする。読んでいて決して楽しいものではなかった。他人の言うことには素直に耳を傾ける姿勢が必要であり、それがこうした事態を招いたように思える。ブッカー賞受賞者だが、ほかの作品に手をのばす気にはなれないな。2019/04/27
ゆのん
88
読書家にとっては何とも切ない物語。小さくて閉鎖的な町にはかなり前から書店が無い。元書店員で本を愛する中年女性が銀行から融資を受けて書店を始めるというストーリー。時代は『ロリータ』が新刊で発売された頃とのこと。書店が身近に無いなんて…考えられない。書店を維持する為に奮闘する主人公に対してさらりと普通で無関心、無責任な周囲の人々には苛立ちすら感じる。作者としては希望を捨てない敗者や周囲に溶け込めない者を描いており、世界は破滅させる者と破滅させられる者とに分かれるという世界感を前面に出してきている。2342019/08/11
南雲吾朗
78
荒涼とした何もない海岸沿いの街(ハードバラ)に本屋(オールドハウス)を開店させる女性(フローレンス)の物語。人生(心)を豊かにする為には本は欠かせないと頑張るフローレンス。邪魔する権力者。それを取り巻く街の人々の心情の変化。様々な障害がある事を知りつつ目標を達しようとする勇気。物語の結末は、何とも切ない。「人間は絶滅させる者と、させられる者に分かれている。いかなる時も前者の方が優勢だ。」これは真にそういう物語。切なくやるせない気持ちになるが、この作家は癖になりそう。(続く)→2019/05/22
ヘラジカ
67
実は『テムズ河の人々』は長年積んでいる。この機会に読もうと思ってたのに、結局こちらから先に手をつけてしまった(原書刊行はこの作品が先みたいだが)。美しい表紙ながらも作者の冷たい筆致に疼きを覚えるような小品。滑らかな木目に手を這わせていたら手に棘が突き刺さった感じ。厳しいリアリズムを貫くことで敗者に寄り添うのは文学の役目でもあるのだろう。サクセスフルな物語を期待する人には向かない。映画版はどうだろうか。まさか筋書きを変えてまでハートウォーミングな作品にしてないだろな。予告を見て一抹の不安が……。2019/03/03
ゆかーん
59
一人の書店員が、海辺の町でブックショップを経営する話。店を切り盛りすることは、自分の想いだけではなかなか上手くいかないもののようで…。隣近所の助けがあって初めて起動になるのかもしれません。一見優しそうに感じる主人公ですが、このフローレンスという書店員が、なかなかの頑固もの。町の人から反対されても強引に、幽霊屋敷をお店にしちゃう所はちょっと頂けない…。周りの意見を無視して、突っ走っている感じが、住民からしたら面白くないのも分かる気がします。もう少し柔軟な人だったら、ラストの結末は変わったんじゃないかな…?2019/09/11