内容説明
ロマ族に生まれ、トレーラーで転々としながら育ったマイキー。男は強くあれという一族のなか父親から絶えず暴力を振るわれる日々は気弱な少年にとって地獄のようだったが、閉鎖的なロマの社会に逃げ場はなく、唯一かばってくれた叔父からは性的虐待を受ける。やがて自分が同性愛者だと気づいた彼は絶望と共に家を飛び出すが…虐待と偏見、閉ざされた世界と壮絶な過去を綴った衝撃の自伝。
目次
豚の子の誕生
素晴らしき日々
グリムきょうだい
パンチを受ける
バービーのお墨付きバンガロー
学校と都会
ウォーレン・ウッズへようこそ
ボクシングクラブ
ブート・キャンプ
邪悪なバウワーズ〔ほか〕
著者等紹介
ウォルシュ,マイキー[ウォルシュ,マイキー] [Walsh,Mikey]
ロマ族出身。イギリス各地をトレーラーで移動しながら育ち、独学で読み書きを学ぶ。2009年に『ジプシーと呼ばれた少年』でデビューを果たし、全英ベストセラー1位を獲得
村井智之[ムライトモユキ]
1968年生まれ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
28
何と言うか暴力=強い者が全てを支配するという凄まじい世界でした。疎外された過去があるからなのかなぁ。外部からはロマとして細別され内部では男らしくないとして淘汰された少年の凄まじい青春期。2021/01/02
まさみ
3
ジプシー一族の最強の男の家系に生まれた少年の苦悩と青春。「男は強く在れ」と強制されるジプシーの世界でゲイというマイノリティとして生まれたマイキーの辛さがひしひし伝わる。(性的)虐待描写は胸糞悪いし胸が痛いが、当事者の憎めない面や愛すべき面も描かれていて、そのバランスに現実のままならなさを感じる。ブレイディみかこの本に出てきたチャブがジプシー由来とか初めて知った。全体的に読み応えあるが、アイリッシュ・トラヴェラ―の見方は偏ってると感じた。あちら側から見れば別の印象を抱くんだろうな。2020/11/18
うたまる
1
伝統的に差別を受けるロマの中で、ゲイという二重のスティグマを負った青年の半生記。虐待と屈辱の少年期を経て自立と結婚というクライマックスで大きな感動が…、と言いたいところだがそうはいかない。全部嘘とは思わないが、かなり誇張が含まれているようだ。小学校就学前の幼児に大人が道具を使って本気で折檻しているのに、骨折や病院のエピソードが一つも出て来ない。そもそもその年齢で時系列の記憶がはっきりしているのも変。本書は父親とは異なるスマートなやり方で、ゴージャから同情と支援とお金を掠め取って見せたのだと深読みしている。2022/04/17
械
1
まるで知らなかった、“その中”。 伝統が縛り付け、苦しむ少年。 簡単に「外の世界で生まれていたら」とは言わないその心中。だからこそ、ページが自ずと繰られていく。 ハッピーエンドの下には、誰かの苦しみと思い出と痛みがある。2021/06/16
Ayano
1
ロマ族のような移動型民族が差別を受けている事実があることを知りました。社会的にもマイノリティであることに加えて、ジェンダーもマイノリティである主人公の受けてきた差別に心が痛みました。自分のことを受け入れてくれる人と出会えてよかったと思いました。2021/02/28