出版社内容情報
パリ郊外の断裁工場で働くギレンは本を〝死〟へ追いやる毎日にジレンマを抱えている。生き延びたページを持ち帰っては翌朝の通勤電車
内容説明
パリ郊外の断裁工場で働くギレンは、大好きな本を“死”へと追いやる毎日にジレンマを抱えていた。生き延びたページを持ち帰っては翌朝の通勤電車で朗読して“往生”させるのが日課。心の拠り所は飼っている金魚だ。そんなある朝、ギレンはいつもの電車で、持ち主不明の日記を拾う。その日から彼の憂鬱な日々は少しずつ変わり始め―人生の悲哀と葛藤、希望を描いた、フランス発ベストセラー。
著者等紹介
ディディエローラン,ジャン=ポール[ディディエローラン,ジャンポール] [Didierlaurent,Jean‐Paul]
フランスのヴォージュ県在住。短編で2度、ヘミングウェイ賞を受賞している。『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』は長編としてはデビュー作となるが、発売前から話題になり、世界36カ国で刊行。ベストセラーに
夏目大[ナツメダイ]
大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。SEとして勤務したのち翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
380
小説は2つの構成要素からなる。前半は、主人公のギレンが朝の通勤電車の中で毎朝、様々な小説等の断片を朗読するのが物語の主軸を成す。そして、老人たちのグループを前にこれを行うのが前半の発展形である。後半は拾ったUSBに書かれていた日記の書き手の探索が中心となる。前半は他者にとっての、そして後半はギレン自身にとっての"癒し"(実はこの言葉はあまり好きではないのだが、今日は特別に)が語られているのだろう。物語の終盤は通俗的な甘さが支配的であり、読後感はややあっけないものである。2021/03/29
kanegon69@凍結中
84
エッフェル塔の傍を走る電車と朝日、そしてセーヌ川が映える美しい表紙。これだけでも手にとってしまいそうだが、本文中にはフランスの風景やフランスらしい美術・芸術・食文化などが出てくるわけではない。パリである必要もないのだが、しかし描写されている心象風景がとてもフランスらしくて繊細で美しい。本が大好きなのに、本のリサイクルのために毎日古本を断裁する仕事に従事する主人公とショッピングモールのトイレで働く女性のヒョンな出会いがとても印象的でフランスらしく繊細な美しさを感じる。エンディングも余韻に浸れる美しい小説です2019/10/05
けんとまん1007
60
毎日が同じような中で、自分の時間・空間を持ち続ける。そこでの出会いをもとに、世界が広がる。偶然ということが、そこにある。それもまた、面白い。淡々と過ぎていく日々の中で、小さな楽しみを持つこと。それを大切にすること。決して、華々しいことではなくてもいい。いや、だからこそいいのかも。2020/07/19
ゆう
36
本が大好きで金魚が友達のギレンの職場は本を死に追いやる断裁工場。そんな彼が通勤電車の中で生き残った本を朗読する、そんな日常の物語。後半ガラっと展開が変わったのにビックリした。けれど、その変わってからの物語は素敵だった。が、しかし、一歩間違えたらそれってストー…モゴモゴ。2019/09/24
信兵衛
34
現代ストーリィですが、まるでお伽話のような展開。 地道に生きている2人が、ある偶然から繋がる、というストーリィ、最後のエンディングには心嬉しいものがあります。2020/01/03