内容説明
憑かれたように小津を敬愛した美術監督・下河原友雄の生と死を描きながら、良き時代の日本映画の魂を追うノン・フィクション。
目次
第1章 小津安二郎への執着(茅ヶ崎館へ;『宗方姉妹』ロケハン;田中絹代と小津 ほか)
第2章 小津安二郎への畏敬と盲従、失望(小津への盲従;小津への失望 ほか)
第3章 小津安二郎の愛の孤独(原節子、愛の行方;『浮草』、小津の深層 ほか)
終章 ふたつの死(小津の死の訪れ;下河原、最後の地へ;「小津さんと、もっといいシャシンを」 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うちこ
4
谷崎潤一郎の『卍』の映画で使われているレターセットや紙製品の美しさに魅せられ、美術監督の名前でこの本にたどり着きました。 読んでみたらとても興味深い本で、著者は美術監督・下河原友雄さんの助手。今でいう学生インターンのような立場。ご自身はその後映画の道へ進まずに、店舗デザインの仕事に就かれています。 当時は戦後で物資が少なかったり経営が微妙で支払いが滞りがちだったりして大変そう。 テレビ普及前の日本映画は “娯楽も芸術も文化も一手に背負っている” くらいのエネルギーが注がれていて、すごいこだわりです。2023/08/09
yokmin
0
P-121 カメラマン・小原「このシャシン(映画)はカメラマンなんていらんよ。アングルから構図までみんな小津ちゃんが決めるんだから・・・『宗方姉妹』は、総合技術じゃあなくて、個人芸術だよ」 そういえば 高橋治『絢爛たる影絵』にも同じようなことが書いてあった。香川京子(女優)もFCCJの会見で、「小津さんは、すべてがあらかじめ決められているが、溝口健二監督は自由に演技させてくれた」と言っていた。 小津は 自分の美学を大切にする完璧主義者だからこそ 『東京物語』を完成させることができたのだろう。 2012/09/17