内容説明
遊園地で働く青年ハードリーはある日、煙草の火傷痕の残る幼い姉弟を見かける。行きがかり上、虐待を通報するも当局に相手にされなかった彼は、証拠を掴むため素人探偵まがいの調査を開始する。見えてきたのは裕福なのに荒れ果てた家と、弁護士の父親の背後にちらつく麻薬組織の影。23年間、面倒を避け気ままに生きてきたハードリーは、幼い命を救うため人生で初めて壮大な賭けを仕掛けるが…。
著者等紹介
バーニー,ルー[バーニー,ルー] [Berney,Lou]
CWA賞イアン・フレミング・スチール・ダガー賞に輝いた『11月に去りし者』(ハーパーBOOKS)、MWA賞最優秀ペーパーバック賞受賞の“The Long and Faraway Gone”をはじめ、これまでに4作の長編小説を上梓。短編小説ではプッシュカート賞を受賞している
加賀山卓朗[カガヤマタクロウ]
愛媛県生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
88
なんていう作品だ。他人のおせっかいはいいから自分のことをちゃんとやれば…とハスに構えて読み始めたのに、最後はしっかり応援している自分がいた。マリファナを吸い、最低賃金でその日暮らしをしている主人公の青年。彼はほんの一瞬見かけただけの子供に虐待の跡を見つけて何とかしようと考える。考えるだけでなく行動に移してしまう。中盤からは「あなたたち、最後まで応援してあげてよ」と女性たちに言いたくなり、計画は「イケるかな」とハラハラさせられ、ついに青年の優しさにやられた。終わり方も最高。2024/02/27
タツ フカガワ
86
遊園地のおばけ屋敷で働くハードリーは23歳。頼りなさげに見えるこの若者が、ある日市庁舎の廊下で幼い姉弟の体に煙草の焼きあとを見つける。虐待を疑い児童サービスへ通報するも対応する気配はない。そこで独自に虐待の証拠を探し始めるが……。先に読んだ同じ作者のハードボイルド『11月に去りし者』とは打って変わった素人探偵のクライム・サスペンス。市庁舎の窓口係でゴス・ファッションのエレノア、その祖母でヘビメタ・ファンのテリーら、前作同様脇を固める人物がいい。最後、ハードリーとエレノアの電話でのやりとりが泣けた。2024/04/02
ずっきん
85
あんたの新作を待ち侘びすぎて『11月』は5回以上読んだよ。もちろん原書はすぐに買ったさ。のろのろ1/3読んだところで翻訳版に追いつかれちゃったけど。わたしもハードリーなんだ。読んでる間ずっと『解錠師』や『ニールケアリー』がよぎった。本書は、ハードリーと周囲の人間たちのリアリティが半端ない。小説のネタにはちっぽけかもしれないけど、これが本当。みんなドラマを背負ってる。読んだ後さ、たまらなくてウロウロしてる。この熱と感情を逃がす方法が見つからない。この歳でも生き方を変えようなんて思っていいのかい?いいよね?2024/02/18
ふう
72
知らなければ何も考えずに通り過ぎることができる。でも知ってしまったら…。通り過ぎることができる人もいるけど、何か行動しなくてはと考える人もいます。この物語の主人公ハードリーのように。そして、彼に同じように好感を持ちながら、その行動を無謀だと止める人と、背中を押す人がいます。わたしも止めていました。物語の結末は悔しく悲しいもので、ハードリーの行動はやはり愚かだったと言えるかもしれません。でも、父親に虐待されている幼い子どもたちを助けたいという若者の強い思いは、人間への希望だということはわかりました。2024/07/29
キムチ27@シンプル
67
筆者は寡作っていうのだろうか・・狙い定めてクリーンヒットを飛ばす御仁と見受けた。お初の作品ながら、読メを読むと一作目の評判の良さは伺える。この作品、読み始めは若者向けかなと感じるほどに読み易く、乗りの良さにつられあっという間に中盤へ。山行の往複車中でも眠気は起きなかった。訳の妙味なのか飛ばし気味の軽妙タッチの底に流れる作者の真意が徐々に見えてきた。若さという特権、チャレンジする意義・・時にはそれが暴走になり、周囲を傷つける羽目になっても大人へのパスポートとして認可されること無きにしも非ず。2024/06/05