内容説明
1986年アメリカ東海岸。ダニーは通称ドッグタウンを仕切るアイルランド系マフィア・ファミリーの片隅に身を置いているが、昔からの仲間と平穏に暮らしていた。ところがある日、長らく共存共栄してきたイタリア系マフィア・ファミリーとの間に小さな諍いが起き、歯車が狂い始める。やがて報復は一線を越え、ダニーは否応なく復讐と裏切りに血塗れた抗争に引きずり込まれていき―。壮大な叙事詩の幕開け!
著者等紹介
ウィンズロウ,ドン[ウィンズロウ,ドン] [Winslow,Don]
数々の賞を受賞し高い評価を受ける世界的ベストセラー作家。ベストセラー作を含め、これまでに22冊を上梓。私立探偵、テロ対策トレーナー、法律事務所のコンサルタントとして働いた経歴を持つ。現在はカリフォルニア州とロードアイランド州で暮らす
田口俊樹[タグチトシキ]
英米文学翻訳家。早稲田大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
296
最初は他の本と並走して読み進めていた。中盤あたりから徐々にのめり込んで、400頁以降は一気読み。『犬の力』三部作と比較するなと言うのが無理な話で、どうしても、地方マフィアの田舎臭い小競り合いに感じてしまい、スケールダウンに思えるが、主人公ダニーの、善悪の矛盾が入り混ざった人物造形も含め、これから先の長大な展開に、じゅうぶん期待を繋げる序章となっている。終わり方から推察すると、続編あたりから話の規模が大きくなってきそうでもあり、ややスロースタートだというだけで、評価は保留。来年が待ち遠しい。2022/06/15
Tetchy
141
ウィンズロウによる新たな叙事詩の幕開け。イタリア系とアイルランド系の両マフィアの抗争を描いた、いわばウィンズロウ版『ゴッド・ファーザー』で1作目の本書を読んだ限りではそれは全く誇張ではないほどの熱量とページターナーぶりを発揮する面白さを兼ね備えた作品に仕上がっている。物語は全く先が読めない展開をみせていくが、そうなることが当然のようにキャラクター設定が絶妙になされており、全く淀みがない。改めてウィンズロウは物語の達人であることを認識させられてしまった。そしてこれがまだ始まりに過ぎないのだから恐ろしい。2023/11/05
ケイ
113
誰が生き残るのかの結末を知りたくて、ページをめくる手がとまらないほど夢中になって読んだ。しかし、肩透かし感も大きかった。ホメロスの叙事詩をもってきたせいだろう。プリアモスの息子のヘクトールがダニーなのか? そしてパリスはリアム?アガメムノンは?と探してしまう。そして全ての元凶であるヘレネがあのおんな?それではあまりに陳腐になってしまうじゃないか。『イリーアス』がなければ純粋にアイルランドとイタリアマフィアの抗争を楽しめたのになと思う。と言いつつも、シリーズ第2作に向かおう2024/02/29
ずっきん
109
英雄達がアイルランド系とイタリア系のマフィアへと姿を変え、ロードアイランドが現代のトロイと化す。ドン・ウィンズロウという機織りがホメロスを織る。『イーリアス』と重ね合わせて読む物語の分厚さ。筋書きがわかっていても緊張を強いられ、あまつさえ戦慄する。ああ、なんて贅沢な読書だろう。人間が善悪両方を内包するように、戦いは例えようもなく哀しいが、美しくもある。ウィンズロウとホメロスの親和性には疑いの余地がない。犯罪小説における現代最高の吟遊詩人のもとへ集い、語りを聞く。そして歌の続きを身悶えしながら待つのだ。2022/06/12
のぶ
108
さすがウィンズロウですね。新シリーズになっても内容も充実していて面白かった。今回描かれるのは、アイルランド系とイタリア系ふたつのマフィアの物語。互いのマフィアは縄張りを荒らすことなく40年に渡って共存共栄していた。ある時、美女を巡ってそれぞれの息子たちの間で諍いが起こり傷害事件となる。そこから均衡に亀裂が入り、凄惨な争いへと発展していく。主人公ダニーは、アイルランド系ファミリー側の娘婿。いろいろな経緯を経て、現在は控えめな一兵卒となっているが・・。本作は人間ドラマをじっくり描いていて、飽きる事がなかった。2022/05/30