内容説明
ロンドンにあるモスクが人種差別主義者たちに荒らされた。モスクに通う“敬虔な”ドラッグの売人ジェイ・カシームは怒りを覚えながらも、同胞の過剰な反撃に疑問を抱く。そんなとき、麻薬密売の容疑で逮捕されたジェイは、無罪放免と引き換えにM15の一員となってテロ対策に協力するよう命じられる。やがてイスラム過激派の中枢部に迫るにつれ、無差別テロが現実味を帯びていき―。英国発の話題作!CWA賞&MWA賞ダブルノミネート!
著者等紹介
ラーマン,クラム[ラーマン,クラム] [Rahman,Khurrum]
パキスタン生まれ。1歳でイギリスに移住しロンドン西部で育つ。IT企業の役員をしながら執筆活動を始め、デビュー作となった本書(原題“East of Hounslow”)は2018年CWA(英国推理作家協会)賞新人賞と2021年MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞ペーパーバック部門にノミネートされ、ジェイ・カシーム・シリーズ2作目となる“Homegrown Hero”が2019年CWA賞イアン・フレミング・スチール・ダガー賞にノミネートされるなど高い評価を得ている。現在はイギリス南東部バークシャーに妻と息子ふたりと暮らす
能田優[ノダユウ]
北海道函館市生まれ。英米文学翻訳家。ブロガー。自身のウェブサイトにて主に未邦訳の海外ミステリーの情報を発信している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゃお
25
モスクには週一しか通わず酒も肉も薬も嗜む麻薬の売人であるイスラム教徒のパキスタン人のジェイ。MI5にリクルートされテロを阻止する任務に就く事になるという、設定だけ見るとあり得無さそう。しかし義に厚いジェイのユーモアある軽妙な語り口で読みやすく、読みだすと止められないものが。しかし実際には過酷な運命が待っており、パキスタン人でありイギリス人であるジェイのアイデンティが揺れ動く様はあくまでシリアスな現実を映し出しています。ラストも衝撃的でこれで終わってしまうとあまりにも切ない。しかし三部作との事で続きを待つ!2022/05/05
羊山羊
14
ド級のエンタテインメント+純文学+スパイスリラ! イスラム過激派の潜入捜査官に選ばれた主人公ジェイの物語だ。本著の凄まじさはジェイを絶えず襲うアイデンティティへの攻撃だ。常に心を殴られる主人公と、その主人公の心を鮮明に描く容赦ない心理描写。とにかく重い。読みながら主人公の心理の追体験を重ねていくうち、読者もその心理に呑み込まれる。終盤の筆致と序盤の筆致の変化があまりにもドラスティックで、これが同一の著者から出てきたことが信じられない。とんでもない1冊だった。2022/05/26
ふる3
4
ジェイは、パキスタン系でロンドンでドラッグの売人をしている。イスラム教徒とキリスト教徒の対立に巻き込まれ、金を失いドラッグの総元締に迫られる。すると、MI5からリクルートされ、テロ組織に潜入するよう言われる。なかなか面白かった。作者自身がパキスタン系で、これがリアルロンドンの人種、宗教対立なのかと、ヒリヒリしながら読んだ。あっと驚く展開も良かった。特になぜジェイが選ばれたのかが分かったときが。 2022/06/18
Abercrombie
4
麻薬の売人からMI5の手駒への転向を余儀なくされた、ムスリム青年の物語。能天気なほど明るい口調の文体に反して、ラストに至るまでの流れを、唐突にぶった切る救いのない結末には、ぜんぜん納得ができない。シリーズ化されてるってことは、第2作のはじめに、実は…っていうあざとい真相が語られるのか?。2022/04/28
ラ・ラ・ランド
1
あまり期待せずに読み始めたが、長さを感じさせない良作だった。主人公のキャラクターがいい。2022/05/28