内容説明
厄介な恋人、価値観の合わない家族、やめられない習慣…あなたがお別れしたいものは、何ですか?そこは、人々の「別れ」を代行する奇妙な会社だった。文学賞受賞作家が贈る、韓国発のお仕事小説!イ・カウル、30歳。これまでまともな仕事に就けないまま非正規雇用を転々とし、気付けば人生崖っぷちだ。そんなとき、“トロナお別れ事務所”という会社の面接が決まる。意気揚々と面接へ向かったカウルがたどり着いたのは、オシャレな街の路地裏にある古びた雑居ビルだった。面接に合格したカウルは、アクの強い社長に振り回されながらも、なんとか成果を上げようと、さまざまな別れの依頼に奔走するが、ある出来事をきっかけに、心の奥底に閉じ込めていた本来の自分と向き合うことに…。世の中に押し流され、自分を見失ってしまった人へエールを送る話題作。
著者等紹介
ソンヒョンジュ[ソンヒョンジュ]
ソウル生まれ。大学で歴史学を、大学院で新聞放送学を専攻した。2008年国際新聞新春文芸で短編小説「母のアルバイト」で登壇し、2009年文学思想で短編小説「あなたの男」で新人賞を受賞。2010年平沙里文学大賞を受賞。2011年「不良家族レシピ」で第1回文学ドンネ青少年文学賞大賞を受賞
古川綾子[フルカワアヤコ]
神田外語大学韓国語学科卒業。延世大学教育大学院韓国語教育科修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キンモクセイ
55
どんな別れでも代行してくれるトロナお別れ事務所。非正規雇用を転々としていたカウルがようやく就職できたのは別れを代行する会社だった。トロナのトロは元通りという意味でナは私や自分のこと。〝本来の私〟という意味。世の中にはたくさんの人がいて別れも様々だ。カウルも職を失わないように必死になるが、取り返しがつかない出来事が待ち受けているとは思っていなかった。代行の別れはある意味、人の人生に大きく関わる事だと気づく。やがて別れを代行してカウルも今までの自分と別れを決意する。本来の自分を取り戻すためでもあったのかも。2022/02/13
星落秋風五丈原
21
映画「サッド・ムービー」で別れさせ屋が出てきたが本作はこれを代行する会社の社員の話。主人公のキャラは結構好みだったが社長がいかにもなおっさんキャラだった。2022/01/04
SHIN
17
人や物とのお別れを代行するお仕事。お別れする際、物理的なお別れだけでなく精神的にも強い心を持って別れて欲しいと願う。他に夢中になれるものが見つかれば良いのだろう。執着は悪い場合にも働くという手本のような内容でした。2024/05/26
Naoko Takemoto
9
以前、系列会社の中途採用で入社した人が、突然こんな『お別れ会社』を通して退職した。こんなことがあるのかと周辺は呆気。トロナお別れ会社は小さな会社で、利益のためなら何でもアリだけど、別れたいというエゴに対するビジネスが存在できることがなんだか恐ろしい。相手を傷つけることだってあるのに。軽い読み口で描かれているので深刻さは薄らぎがちだが、人生に避けて通れない『別れ』の本質をじんわり考えさせられた一冊だった。2022/02/06
ぱせり
6
どんな相手ともあとくされない別れを代行してくれるトロナお別れ事務所。お別れをコーディネイトするマネージャーは人の別れに立ち会い、別れる人や別れを告げられる人の痛みに寄り添い悩みながら、実は、自分の「別れ」と向き合っていたのかもしれない。一番大きな顧客は自分自身だったのかもしれないね。2022/01/06