内容説明
第二次大戦のさなか、ドイツ占領下のポーランドに“ザ・ハントレス”と呼ばれた殺人者がいた。森で人を狩り、子供や兵士を殺した冷酷な親衛隊将校の愛人。その女に弟の命を奪われた元従軍記者の英国人イアンはナチハンターとして行方を捜し、1950年春、手がかりを追って大西洋を渡る―。一方、米国ボストンでは、17歳の娘ジョーダンが父親の再婚相手に不審を抱き…。壮大な歴史ミステリー。
著者等紹介
クイン,ケイト[クイン,ケイト] [Quinn,Kate]
ボストン大学で古典言語の学士号と修士号を取得したのち、作家の道へ。古代ローマを舞台にした4作と、イタリアのルネサンス期を描いた2作の歴史小説を上梓。その後発表した『戦場のアリス』は全米100万部のヒットとなり、NYタイムズやUSAトゥデイのベストセラーリストを席巻した。南カリフォルニア在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アン
116
第二次大戦中、ドイツ占領下ポーランドで子供や捕虜を殺した冷酷な女狩人「ザ・ハントレス」。カメラマン志望の娘ジョーダン、従軍記者からナチハンターとなったイアン、生き証人で元ソ連軍女性飛行士のニーナ。物語はこの3人のパートで構成され『戦場のアリス』と同様に史実を基に創作された歴史ミステリー。人物造形に優れ、特に勇敢で強靭なニーナの存在が際立ち、夜の魔女たちの場面には胸を打たれます。復讐と正義、忘却と記憶。異なる時を生きた彼らがハントレスの正体をどう暴くのか…。3本の糸が手繰り寄せられる終盤は忘れ難い印象を。 2022/01/09
ずっきーーーん
83
読み応え抜群の歴史スリラー。鷲とか犬とかジャッカルに心を躍らせ、スワンに胸を締めつけられた人になら問答無用でお勧めする。逃亡したナチスの愛人を追うナチハンターたち。元従軍記者に米軍兵士、とりわけソ連の飛行士ニーナのパートがよかった。ドイツ兵を震え上がらせた女性爆撃連隊『夜の魔女』ここだけでも一作読んだくらいの満足感があるし、この手の小説で女性の造形にまったく不安が無いのがいい。イェーリガンをもっと膨らませてくれれば、より緊迫感が増した攻防になったと思う。史実に囚われすぎてしまったのか。ともあれ年ベス入り!2021/12/22
Panzer Leader
71
最近WWⅠやWWⅡ、戦後間もない時期を舞台にした冒険・ミステリー・スパイ物(自分の好みのジャンル)が多数出版されていて、中には疑問に思える出来の作品もあるが、本書はそれらの作品とは一線を画した傑作と言っても良いだろう。従軍記者上がりのナチハンター・脱走したソ連の女性飛行士・写真家を目指すアメリカ人の女性達の視点で物語は進み、ハントレスと名付けられた女性戦争犯罪人を追い詰める。前作「戦場のアリス」を読んだ人には嬉しいゲストも登場し、800頁近い大作ながら長さを感じさせない読みごたえ抜群の作品。2022/03/28
キムチ27
62
前作読んだ時はさほどに感じなかった筆者の技・・今回は味堪能。フィクションの底に沈む事実・・膨らませ 泳がせ 昇華し得た妙。この二年。欧州もの中心に読み、ナチス系を多く読んできつつ、まだまだ未知なる状況に触れ 悍ましさすら覚える。資料の一つに有る「アイヒマンを追え」を知り、合間に視たのも収穫。ダッハウ裁判~ニュルンベルグ~冷戦の鎮火~再浮上するナチ大物の追及。組織のみならず、個人も存在する。ナチハンターの獲物は欧州各地に散らばり 権力中枢に在る人物も多い。あからさまな妨害もあった。最初のハンターの嚆矢たる2022/04/11
Sam
60
これ滅茶苦茶面白いです。なんでミステリランキングに入ってないの?刊行のタイミングの問題?本作は市井に紛れ生き延びようとする「ハントレス」とそれを追うナチハンターの物語。ヒッチコックが言うところの「スリルとサスペンスとショック」が満載なうえ、3人の視点からのストーリー構成が秀逸で推進力がすごい。人物造形が秀逸なことも本作の大きな魅力で、どの登場人物も個性的でリアル。特にニーナという強烈なキャラが素晴らしくて、これに比べるとハントレスが(謎の人物であるが故にではあろうが)薄い印象になるほどであった。訳も良い。2022/01/17