出版社内容情報
樋口一葉の「人と文学」の両面から、その全体像の把握を目指している。古典と近代の過渡期を体験した一葉は、短い人生の中で、日本文学史の大きな節目を提示している。一葉がどのような文学的な意欲を、どのような文体で実現したのかは、完成作品としての一葉の短編小説の中に実現されているが、一葉の残した和歌・日記・雑記・書簡などにも焦点を当てて、一葉文学の深層を読み解き、わかりやすく解説する。文学ジャンルや時代性、同時代の文学者との交流や相互の影響など、多角的な視点から、一葉文学の魅力と達成に触れてみたい。
目次
樋口一葉の文学世界
「萩の舎」以前の一葉と樋口家の人々
「萩の舎」入門
一葉における無常の認識
小説家への道
習作期から「武蔵野三部作」へ
作品発表の新たな舞台
『都の花』と『文学界』への登場
下谷龍泉寺町時代
本郷丸山福山町時代の文学開花
博文館とのつながり
さまざまな可能性
『たけくらべ』を読む
『通俗書簡文』と、現実への回路
一葉文学の達成域
著者等紹介
島内裕子[シマウチユウコ]
1953年東京都に生まれる。現在、放送大学教授、博士((文学)(東京大学))。専攻は中世を中心とする日本文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
187
古典を取り入れた創作を萩の舎で叩き込まれ、そこで自ら作った歌を種に小説を書き始めた。一葉の小説を自力で読むのは大変だが、本書は日記を参照しつつ作品を年代順に辿り、一葉の人生と絡めて作品の勘所をわかりやすく示してくれる。日記には、母と妹を養うため苦しみの中で執筆する日々、母や妹と小さな店を開いた頃のこと、また半井桃水への片思いを仄めかした所…等々。こんなにも倹しい生活圏から後世に残る名作を紡ぎ出していった一葉のひたむきな仕事に打たれずにいない。ラジオ講座は始まったばかりだが、テキストだけ先に読んでしまった。2023/04/22
masasamm
0
放送大学の教科書。樋口一葉の作品をもっとじっくり読みたくなりました。2024/01/26