内容説明
ケント州の「死者の森」で、頭部を銃で撃たれた死体が発見される。地元警察が自殺として処理するつもりだと考えた被害者の妹は、警察を退職して私立探偵を始めたビーフに事件の再調査を依頼する。一方、その一年前、ウェリントン・チックルは一冊の日誌を書き始めた。「私は殺人を実行する決心をした。…そして、ここが肝要な点なのだが、―私には動機がないのだ」『野獣死すべし』ばりの構成の妙とフェアプレイの精神で読者を魅了する、英国本格の精華がここに登場!
著者等紹介
ブルース,レオ[ブルース,レオ] [Bruce,Leo]
1903年、ケント州イーデンブリッジ生まれ。本名ルーパート・クロフト‐クック。さまざまな著作活動を行いながら、ブルース名義で1936年に最初の本格ミステリー『三人の名探偵のための事件』(扶桑社ミステリー)を発表。ビーフ巡査部長を探偵役とする長篇を8作刊行したのち、新たな探偵キャロラス・ディーンを登場させる。その後計23作のディーン・シリーズを遺し、1979年死去
小林晋[コバヤシススム]
1957年、東京生まれ。クラシック・ミステリーを中心に訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cinos
62
森で頭を打ちぬかれた男の妹の依頼で事件の捜査に乗り出すビーフ巡査部長(実は警察をやめた探偵)。記述者タウンゼントに自分の活躍を書いた小説のことで苦言を呈し、ビールを飲みながらも事件の真相に迫っていく。一方、完全犯罪を企てる男の手記も挿入される。解説のタイトルの説明に納得しました。某作品は読んでいたけど、この作品の結末には満足しました。小説に書かれる探偵と記述者という関係はホーソーンとホロヴィッツみたいと思いました。面白かった! レオ・ブルース、もっと出してほしいです。2021/02/13
ハスゴン
31
犯行し手記が挿入されるなどミステリファンの心を刺激する作品でした。2022/09/17
geshi
31
倒叙ものの一つとして読んでいたが捻った解決を求める探偵小説マニアに向けての皮肉な結末にニヤリとできなかったので、最初からそういうものとして読めば面白さが違ったかな。冒頭にチックルの動機なき殺人計画が記され、名探偵ビーフが記述者をやきもきさせながら聞き込みを行い手掛かりを拾い上げて徐々にチックルに迫っていく展開はオーソドックス。しかしラストの解決編で読者の逆手をとる拍子抜けを行い、構造のためにカタルシスを放棄してしまって釈然としないものが残った。2021/06/02
本木英朗
20
英の本格ミステリ作家のひとりである作者の長編のひとつである。ケント州の「死者の森」で、頭部を銃で撃たれた死体が発見される。地元警察が自殺として処理するつもりだと考えた被害者の妹は、警察を退職して私立探偵を始めたビーフに再調査を依頼する。一方、その一年前、ウェリントン・チックルは一冊の日誌を書き始めた。「私は殺人を実行する決心をした。……そして、ここが肝要な点なのだが、――私には動機がないのだ」……という話である。さすがビーフ、そしてブルース先生である。これはもう、読むしかないってば!(→)2021/02/16
J・P・フリーマン
15
序盤に犯人の犯行計画の手記を持ってくるという構成で、倒叙ミステリの趣があるけど、物語全体から普通の倒叙ミステリではないことが伝わってくる。メタな発言を挟みながら真相にたどり着くビーフ巡査部長だったが、この結末はサプライズというより肩透かしでは?と思った。2021/06/03
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